雪道のトラックは運転にも神経をすり減らしている
「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。
前回は、トラックドライバーの「ポイ捨て」について指摘したが、今回からは、雪国を走る現役のトラックドライバーから聞いた「彼らの知られざる苦労」と、一般ドライバーにも有効な「雪道走行時の対策」を前編・後編に分けて紹介していきたい。
これまで「トラックドライバーの知られざる苦労」を数多く紹介してきたが、雪国を走るドライバーにとって、冬はさらにその負担が増える。
この時期、彼らにとって配送以上に大変になる作業が、「
除雪」だ。
朝、家を出る際にまずしなければならないことは、
マイカーを走らせるための除雪。そして、会社に着くと今度は
トラックを出庫させるための除雪が待っている。
箱車(荷台が箱型のトラック)の場合は
、屋根の雪下ろしも必須となる。積もってから時間が経ち、氷の塊のようになった雪は、そのまま放置して走ると後続車に凶器となって襲い掛かることがあるからだ。
箱車に積もった雪。凍った雪をそのままにして走ると大変危険
一方、
平ボディ(荷台が板状のトラック)は荷台に屋根がないため、荷積みをする前にやはり
荷台の雪下ろしが必要になる。事前に幌(ほろ)と呼ばれるシートを掛けておいても、積もった雪の重さで垂れ下がるため効果はほとんどないに等しい。
さらに、降雪の多い日は配送を終えて自社へ帰庫した際も、朝から降り続いた雪が駐車場にたんまり積もっており、
トラックを駐車するために再度除雪する必要があるのだ。
彼らの苦労は、除雪作業だけではない。無論、走り方や危険度も非降雪地域とは大きく違うため、運転時も常に神経を尖らせておく必要がある。
中でも雪国の
トラックドライバーが口を揃えてタブーとするのが、「急」のつく運転だ。
雪道や凍結した路面での「急発進」「急ブレーキ」「急ハンドル」などは、コントロール不能に直結する。
こうした現象は乗用車にも同じことが言えるが、トラックの場合は、後ろに大量の荷物を積んでいるため、一度スリップすると立て直しが利かなくなり、起こした事故も規模が大きくなりやすい。
そのため雪道を走るトラックドライバーは、大きな動力を要する「ゼロ発進(完全停止からの発進)」を避けるべく、
赤信号が道の先に見えると、ゆっくりとしたスピードで最徐行することがある。が、こうした事情を知らない乗用車が、その大きく空いた車間に急に入り込んでくることがあり、その度にヤキモキすると彼らは嘆く。
雪道でクルマをコントロール不能にさせるものには、その他に「
轍(わだち)」がある。
一見、轍に沿えば走りやすいと思いがちだが、その溝に深さがあるとハンドルを取られるだけでなく、その路面が凍り固まっていれば、スリップ状態から延々抜け出せなくなるのだ。
こうした凸凹な道を作る要因として、もう1つ恐れられているのが「
マンホール」だ。
マンホールの上には雪が積もりにくい。その地下には生活排水が通っており、路面温度が他の場所よりも高いからだ。
そのため、
マンホール部分は雪の積もった地面と大きな段差ができ、そこにタイヤが突然落ちたりハマったりすると、クルマが壊れるほどの衝撃が生じるとともに、やはり抜け出せなくなるという。
トラックは、こうした凸凹を大変に嫌う。積んだ荷物を破損させる恐れがあるためだ。が、そんなトラックの中でも凸凹道に弱いのが、けん引車であるトレーラーである。
トレーラーは運転席(トラクター部)と荷台(トレーラー部)がそれぞれ独立しているため、ハンドルから伝わる感覚だけではクルマを完全にコントロールできない。
トレーラー部のタイヤが傾斜や轍に取られれば、運転席もろとも横転する恐れが非常に高いのだ。
そんな凸凹道を避けるべく、積雪や降雪が激しい時、トラックドライバーはどんなに混んでいても幹線道路をなるべく使うようにするという意見もあった。
幹線道路には、塩化カルシウムでできた「凍結防止剤」が撒かれるなどの対策がなされていることが多く、比較的積雪が少ない。そのため、抜け道や路地などよりは雪にハマるリスクが減るのだ。