雪国での運転で恐ろしいのは、道路のコンディションだけではない。積雪による「
視界不良」も大変怖い。
吹雪などによって視界が真っ白になると方向感覚が失われる「ホワイトアウト」をはじめ、雪道ではとにかく視界が悪くなる。
そんな中、クルマ側の原因として多く聞かれたのが、「
ライトの周りの雪が溶けない」という声だった。
ライトが雪で覆われかけたトラック
昨今、その省電力性能と長寿命からクルマのヘッドライトに多く採用されているLEDライトは、HIDやハロゲンと違い「熱」をほとんど発しない。そのため、ライト前に積もった雪が溶けず、点灯しても前が全く見えなくなることがあるのだ。
ゆえに雪国には、フォグランプをハロゲンにしているドライバーが多いというが、光量はやはりヘッドライトよりも劣るという。
こうした問題はヘッドライトだけではなく、テールランプにも同じことが起きる。
先のホワイトアウトなどが起きた際は、視界は真っ白。車線どころか、歩道と車道の境すら分からなくなる。そんな中、前方車両のテールランプが雪に覆われていれば、もはや方向感覚は崩壊状態となるのだ。
もう1つ、彼らにとって脅威になるのが「
雪に慣れていないクルマ」だ。
アイスバーンで急ブレーキを踏んではスリップしているクルマが前後左右に存在すると、追突されないかという不安に襲われる。
特に北陸・中部地方の内陸あたりは「雪が降っていない」「凍結していない」と思われることが多く、ノーマルタイヤで訪れる乗用車が目立つという声もあった。そのため、地元以外のナンバーを見ると、距離を取って走るというドライバーも少なくない。
雪国は、室外はもちろん車内も大変寒く、クルマのエアコンの暖房ではなかなか温まらない。また、詳しくは後編で述べるが、降雪時にクルマのエンジンを掛けたまま長時間車内で待機すると、マフラーの排気口が雪で塞がり、排ガスが車内に入り込んで一酸化炭素中毒を起こす危険性も生じる。
そのため雪国では、エンジンを切っても車内を温められる「
FFヒーター」の取り付け率が高く、特に長時間車内待機を余儀なくされるトラックドライバーには愛用者が多い。
また、こちらも後編で詳述するが、トラックドライバーが常備しているものの中でも必需品となっているものが、「
非常食」だ。
立ち往生した際、近くにコンビニやスーパーがあるとも限らない(あっても豪雪時は開いていないこともある)。そのため、
数日分の食料と飲み物は常に用意しておくというドライバーが大変多かった。
もう1つ立ち往生対策として、どんなに短い距離を走行する場合でも、
燃料は常に満タンにしておくというのも大事だそうだ。中には、燃料が3分の1の状態で30分ほどの場所へ向かったところ通行止めに遭い、3日間閉じ込められたという経験を話してくれたドライバーもいた。
生活インフラの1つでもある物流。こうした悪天候や災害に見舞われた地域に目を向けると、毎度つくづく思うのが、物資が必要な場所ほど、その道のりが険しいことだ。そして、
我々の生活が滞りなく送れている陰には、見知らぬ人たちのこうした努力や苦労があることを改めて感じる。
<取材・文/橋本愛喜>