COP25閉幕。グテーレス国連事務総長の落胆と、閉会後のグレタさんを巡る騒動

ところで気になるグレタさんは

 ところでグレタ・トゥーンベリさん(16)だ。アメリカ東海岸から大西洋をヨットで横断するという長旅を無事に終え、その足でマドリードのCOP25会場まで直行したグレタさんは、まず、若者らによる座り込みデモと街頭デモに参加した。このうち、街頭デモには数千人の若者らが参加したと伝えられている。  ついで、11日にはCOP25の関連イベントにパネリストとして参加、各国の閣僚らを前に演説と討論を行った。  グレタさんはこの演説で、「本当の危機は、ずる賢い計算と創造的なPR活動くらいしか行っていない政治家やCEOたちが、あたかも現実の行動を起こしているかのように見せかけることなのです」という印象的な言葉を残している。  COP25には、前の記事で紹介したテレサ・リベラ環境保護大臣(スペイン)も参加していたが、会期中、そのリベラさんがまるで母親かのようにグレタさんに寄り添う姿が幾度も見られた。リベラ大臣に以前から注目していた筆者には、その光景が何とも微笑ましかった。例えば以下のYouTube動画には、2人が並んで座り、リベラさんのスマートフォンで記念撮影しているらしい瞬間がとらえられている。〈*Greta Thunberg holds news conference in Madrid during COP 25(10:20頃)

帰路のグレタさん、ドイツ鉄道でちょっとしたトラブルに

 COP25での全ての役割を無事にこなしたグレタさんだったが、スペインから故郷スウェーデンへ帰る途中のドイツで、ちょっとしたトラブルに巻き込まれた。  ドイツ鉄道の特急列車に乗ったグレタさん一行は、満員だったため、しばらく床に座っての乗車を余儀なくされた。グレタさんはそのことを写真付きでツイートしたが、すると、そのしばらく後、ドイツ鉄道のツイッターアカウントが「グレタさんらを1等席でもてなした」とする2つのツイート(12)を投稿したのだ。  ドイツ鉄道によるこれらのツイートは、半分が本当で半分が嘘の、非常に誤解を招くものだったのだが、一部のグレタ・アンチな人物らがこれに飛びつき、「本当は席に座っていたグレタが、ポーズのため“床に座っている”と嘘を言った!」と騒いだのだ。この事態を重く見たドイツ鉄道は、プレスリリースを出して事の経緯を説明した。  そのプレスリリースとグレタさんによる補足ツイート、そして、グレタさん一行と同じ列車に乗っていたジャーナリスト/弁護士の Alexandra Urisman Otto さんの証言によると、事実は次の通りらしい。  グレタさんらはスイスのバーゼル(Basel)からドイツ鉄道の特急列車ICEに乗り、ドイツの南西部から北部へ進むルートをとった(参照:ICEの路線図 )。この時、まずバーゼルから乗るはずだった列車が運休となり、そこで恐らく、取っていた座席の予約がキャンセルになった。そのため、後続の満員電車に乗ることになり、バーゼルからしばらくは床に座っていた。  その後、徐々に空き席ができ、まずグレタさんの同乗者がフランクフルト(Frankfurt)で、ついでグレタさんがカッセル(Kassel)からゲッティンゲン(Göttingen)の間で、そして、Ottoさんがハノーファー(Hannover)で、やっと座席にありつくことができた。つまり、途中までは床に座っていたが、途中からは座席に座ることができた、というわけだ。  グレタさんが席を得ることができた駅について、ドイツ鉄道側はカッセル、グレタさんとOttoさんはゲッティンゲンと証言しているが、カッセルからゲッティンゲンまではICEでたった一駅のため、両駅の間のどこかで席にたどり着き、そして、席について最初に到着した駅がゲッティンゲンだった、と考えれば何ら矛盾はないだろう。  以上のように、この件は誤解を招くツイートをしてしまったドイツ鉄道に落ち度があったと言えるだろう。近年、ドイツ鉄道は列車の運休や遅延などが頻発しており、いささか評判が悪いようだ。その上さらに、有名なグレタさんを床に座らせたことで評判が地に落ちてしまったら…とでも考えたのだろうか、ドイツ鉄道のツイートやプレスリリースからは、いささかの焦りが感じられた。  世界的な有名人となり、一挙手一投足までもが報じられるようになってしまったグレタさん。もうしばらくは何かと大変そうだ。  そのグレタさん、その後、「Home!」と元気そうにツイートし、無事にスウェーデンの自宅に到着したことを報告している。この、めげない感じのグレタさんが、筆者はとても好きだ。 <文/井田真人>
いだまさと● Twitter ID:@miakiza20100906。2017年4月に日本原子力研究開発機構J-PARCセンター(研究副主幹)を自主退職し、フリーに。J-PARCセンター在職中は、陽子加速器を利用した大強度中性子源の研究開発に携わる。専門はシミュレーション物理学、流体力学、超音波医工学、中性子源施設開発、原子力工学。
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