ZARAのインディテックス、今期上半期も10%近い成長。スペイン各紙が分析した勝利の要因とは?

CEOのパブロ・イスラ

北京で行われたニューエコノミーフォーラムで登壇したインディテックスCEOのパブロ・イスラ(写真左から2番め) photo via Inditex

純利益12%の伸びをいまだに続けるインディテックス

 デザインの模倣や下請けのブラックな労働環境など問題は噴出するものの、ZARAを傘下に収める企業インディテックス(Inditex)は常に売上を伸ばしている。  今期上半期(2月1日から10月31日)の売上は198億2000万ユーロ(2兆3390億円)で前年同期比7.5%の伸び、純利益は27億2000万ユーロ(3210億円)で12%の伸びを記録した。(参照:「El Mundo」)  今年9月にインディテックスのCEOパブロ・イスラは講演で次のように表明した。 「インディテックスはそのすべてのブランドがすべての市場で比較対照できる形で成長している。それはビジネスがうまく遂行していることを示すもっとも傑出したものだ」(参照:「Expansion」)

スペイン紙が分析するインディテックス勝利の法則

 インディテックスがなぜいつも成長し続けているのかという疑問にスペイン電子紙『Vozpopuli』(12月12日付)が次のような回答をしている。それに筆者の意見も加えておく。 ◆ネット販売への順応  小売りとVRIO分析の専門家ハシント・リョルカは「そのメインのキーは外部の嵐などに耐えるだけの土台を備えているということだ」と述べ、「インディテックスは疑いなくネット販売に順応することを最も良く知っているファッション企業だ。そのネットワークは完璧に行われている」と付言した。  オンラインによる販売は現在インディテックスの売上の14%を占めている。昨年は一昨年比28%の成長を見せた。今後もオンラインによる販売と店舗の大型化を介して販売を伸すという方針のようだ。(参照:「Ecommerce News」)  パブロ・イスラが最も拘っていた一つがオンラインビジネスであった。今年新たにジェネラル・マネジャーとしてカルロス・クレスポが加わったが、彼はオンライン販売について非常に熟知している人物だ。インディテックスはアマゾンにも十分に対抗できるオンラインの世界販売網を構築していく構えだ。またそれだけの資金力もある。 ◆プロを常に配置する柔軟かつ迅速な組織構成  また「ファッション企業の巨人でありながら新しいトレンドに順応することを理解し、役員陣を選ぶにも非常に的を得た選択をしている」と指摘したのはスペイン小売連合会のラウレアノ・トゥリエンソ会長である。  カルロス・クレスポが加わったように、社外から有能な人材を採用するということも同族企業にないプロ集団の企業としてインディテックスが発展しているのだ。それは創業者アマンシオ・オルテガの考えを反映させたものである。パブロ・イスラが正にそうである。彼は創業者とは全く縁故関係のない人物だ。国家弁護士の資格をもち、ポプラル・エスパニョル銀行で法務サービス関係の業務を担当。そのあと公務員となった後に、またポプラル・エスパニョル銀行に復帰。それからスペインを代表するたばこ企業アルタディスの社長に就任したあと、2005年にインディテックスの副社長として入社し、2011年に社長となった。  アマンシオ・オルテガはインディテックスの経営はすべてパブロ・イスラに任せている。オルテガには娘が二人(異母姉妹)いるが、そのひとりは将来インディテックスのオーナーになる予定であるが、そうかといって会社の経営に加わっているのではない。よく父親と行動を共にしている。即ち、娘も父親と同様に会社の経営はプロに任せるという方針のようだ。ただ、この二人の娘はインディテックスの株主でスペインの富豪となっている。 ◆ロジスティック面で他社が真似できないシステム  更に、インディテックスが優れているのは外国市場を含め7500店舗を構え、それぞれ異なった国の需要にもスピーディーに対応できるためのロジスティック面で他社が真似できないシステムを備えているということだ。
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さらなる成長の余地はあるのか?
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