慰謝料も払わず「離婚後もたまにデートしような」……。往生際の悪いモラ夫たち<モラ夫バスター40>

弁護士・大貫憲介のモラ夫バスターな日々<40>

 「いきなり電話してきて、お前、なんだよ」  夫(40代)に電話して、私が弁護士と名乗ると、夫は初めから戦闘モードだった。  私は、「よしえ様(仮名)は、離婚したいそうです」「まず、会ってお話ししたいのですが、お時間をいただけますか」とゆっくり尋ねると、夫は一瞬黙って、明日同じ時刻に電話くれと言った。

財産分与、慰謝料なしの協議離婚

 2018年の離婚総数は、約20万件である(参照:人口動態統計の年間推移|厚労省)。  そのうち、調停離婚が成立したのは、約3万5000件である(参照: 婚姻関係事件数―終局区分別|Court In Japan)。  すなわち、離婚6件のうち、おおよそ5件は協議離婚、1件は調停離婚である。弁護士が関わらない協議離婚の多くがどのようなものか、その実態はよくわからない。  しかし、離婚後の法律相談やSNSなどでは、モラ被害妻たちが、財産分与や慰謝料なしで離婚し、養育料も満足に支払われていない事例が散見される。おそらく8割を占める協議離婚はほとんどが、そのような内容なのだろう。

 「お前は俺なしでは生きていけない」

 モラ夫は妻を支配し、家事育児に従事させる。彼にとって、妻はとても都合の良い存在なので、逃げないよう妻を囲い込む。そのため妻が自立しないよう、日々、呪いの言葉をかけ続ける。 「お前など、社会の役に立てない」 「稼げるはずもない」 「俺がいないと、経済的に困るぞ」  被害妻たちは「俺の言うことが信じられないのか!」と怒られ、モラ夫の言葉を疑うことを禁じられている。そのため、モラ夫の呪いを乗り越えることは、容易ではない。
次のページ
8割の被害妻は、モラ夫を恐れて満足な慰謝料を請求しない
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会