細見和之教授「私の背後には最低20人の教員が控えている」
登壇した細見和之教授
今回の集会では二人の教員からの発言もあった。フランクフルト学派などのドイツ哲学を専攻する細見和之教授は次のように述べた。
「総合人間学部の教員の細見です。私は京大に着任して4年になりますが、この4年の間にずいぶん京大は変わっていったなという気がします。
総合人間学部の教員のなかには
今の京大に非常に強い危機感を持っている者もいます。特に今回の無期停学処分については、
いくらなんでも重すぎるというのが教員の大半の意見でした。処分の理由になった、学生たちが抗議文を届けに行った時の出来事が文章になっているのを読んで私が思ったのは、なんでこれが処分の対象になるの?ということでした。これくらいでは口頭注意すらいらないだろうというのが半分くらいの教員の考えでした。
大学の執行部は、『教員に対して学生が抗議したり抵抗したりするのはいいが、職員に対してそれをやるのはいけないんだ、なぜならそこに侮蔑があるからだ』などと言っていました。これは非常にずるい考えです。都合の悪いことはみんな職員にやらせればいいんだということになってしまう。
私はおそらく大学の執行部からしてみたら、のこのこ現れた1匹のゴキブリのようなものだと思います。これは卑下して言っているのではなく、私は小さい頃からゴキブリが1匹いたらその背後に最低20匹のゴキブリが潜んでいると教わってきました。私はこれまでの経験上、その通りだと思っております。つまり私の背後には最低20人の教員が控えている。そのことをご理解いただきたいと思います」
また細見教授の後には中国の政治思想や労働運動を研究している江田憲治教授が「どうも、2匹目のゴキブリです」と切り出し、以下のように発言した。
「今から半世紀ほど前、京大はある教員(筆者注:竹本信弘を指している)を処分するために時計台で理事会を開き、それを学生に妨害させないためになんと機動隊を呼びました。私もそれを見ていた野次馬の一人でした。機動隊はジェラルミンの盾を縦に振りかざし、学生を暴力的に排除しました。私の隣にいた学生は頭を殴られました。
しかし、そんな頃の京大に比べても今の京大はもっと自由が失われていると思います。だからこそわれわれは、少数派であっても声を上げなければならないのです。アメリカでも、私の専攻している中国でも、自由な見解と多様な価値観の表明が難しくなっています。しかし、我々にできずに誰にそれができるのかと思います。皆さんには声を上げていただきたいし、我々もお力添えができることがあればやっていきたいです」
三学生に対する無期停学処分の撤回を訴えることが今回の集会の目的であったことは既に述べた。しかし、そもそも無期停学処分とはどのような処分であるのかはほとんど知られていないのではないだろうか。ある学生は集会で無期停学処分の内実について述べ、その在り方自体がハラスメントなのではないかと訴えた。
「私は今回の三学生の処分で、無期停学処分とはどのようなものであるかを知りました。無期停学処分を受けると、大学に通えなくなります。これは大学の授業を受けられなくなるというだけではなく、大学の構内にすら入れなくなるのです。食堂でご飯を食べたり、図書館を利用したり、友達と待ち合わせをすることすらできないのです。それなのに、授業料だけは払い続けなければならない。処分を受けた学生は、学生の本分であるはずの教育の機会を失われている状態で、学費だけは払い続けなければならないんです。
私にはこの処分が妥当かどうかさえ疑問の余地が残るのに、処分された3人が金銭的な負担さえ強いられるというのは悪質なハラスメントの構図に映ります。ただでさえ精神的な負担が大きい中で、金銭的にも締め付けていく。こんな理不尽なやり方を許していいのでしょうか。三学生への処分撤回のための署名、オルガ処分撤回のための署名をお願いします」
そして今回の集会で最も盛り上がりを見せたのは、無期停学処分を受けた三学生のうちの一人である北村剛さんが大学当局から出入り禁止にされている構内に入り、勇気をもって発言した場面だろう。北村さんのアピールは以下の通りだ。
アピールする北村さん
「皆さんこんにちは!今日はハイテンションで最後の発言やっていきたいと思います!
僕は9月に無期停学になりました。本当は学内出入り禁止で入っちゃいけないんですけど、今回はどうしても皆さんに直接訴えたくて入っています。
今回処分されたんですけども、処分理由は職員に対して抗議したことなんですよ。具体的に言ったら熊野寮生が厚生課へ要求書を提出した時、ある学生が職員10名くらいに羽交い締めにされて暴力を振るわれていたんですよ。そこへ割って入って、『おかしいでしょ、暴力やめてください』と言ったら、職員の業務、暴力を振るうという業務を妨害したとして処分になったんです。これは本当におかしい。
これまでの処分には、ほとんどこの類いのでっち上げなんですが、職員への暴行や建造物侵入などの法的根拠・大義名分がありました。しかし今回の僕ら熊野寮生3名への無期停学処分は、職員に対して抗議したというだけの理由です。これだけで無期停学処分になるというところまで来ているんです。オルガ処分の件を見ても分かる通り、京大は誰でも処分対象になり得るというところまで来てしまっているんです。
僕一人だけが無期停学処分を解除するだけならそんなに難しくないんです。具体的には、大学に対して『僕のやったことは全部間違ってました。ごめんなさい。二度としません』と言って誓約書にサインして出せば処分は撤回されるでしょう。しかし、そんなことをしても今後起こる学生への処分、またタテカン規制、自治寮潰しなどの管理強化は止まるわけがないんですよ。だから今回の僕達の処分は、学生は大学の言う事を聞いて黙っていなさいという見せしめの処分だと思っています。だからこそ僕は、これを僕ら3名だけの問題ではなく、みんなの問題として一緒に考えていきたいと思っています。
京大では今、一部の理事会だけが意志決定を行い、学生や教授の意見をくみ取らずに決定したことをすべて押し付けているんです。学生の言う事はまったく聞き入れず自分たちのやり方だけは無理矢理通す、これが京都大学の現状です」