次にたどり着いたのは、
FILCO の
「Majestouch 2」のテンキーレスだ。これは、打鍵感がすこぶるよかった。HHK の打鍵は、少しモワッとした丸さを感じる。Majestouch の打鍵感は、シャキンッというメカニカルさがある.
Majestouch 2テンキーレス
photo by DIATEC
私は店頭の試し打ちで、Majestouch の打鍵感が気に入った。その後、FILCO のキーボードに様々な軸があることを知った。私はこのシリーズのキーボードを、数台壊れるまで使った。
現在、私は、
KINESIS の「
Freestyle2」を利用している。左右分離型のエルゴノミクスキーボードだ。
左右分離型のキーボードを利用するには、ひとつのハードルがある。左右にキーボードが分かれているために、我流のブラインドタッチでは指が届かない場合がある。
幸いなことに、このキーボード購入の少し前に、入力速度を上げるために、1ヶ月以上かけて、きちんとしたブラインドタッチを修得していた。そのため、左右分離型のキーボードを利用できる環境が整っていた。実際に使ってみると、肩を開いた状態で入力できるので、長時間の連続入力に向いていた。
ただし欠点もある。キーボードを左右離して置くせいで、普通ならマウスがある場所にキーボードが来てしまう。キーボードを優先するか、マウスを優先するかという悩ましい問題が発生する。
また、この Freestyle2 は、日本語配列ではなく英語配列という問題がある。そこで、キーの位置を変えるソフトを利用して、日本語として入力しやすいようにカスタマイズした。そうしたことをすると、また別の問題が発生する。キーキャップに刻印されている文字と、実際に入力する文字が異なってしまうのだ。
この問題には便利な解決方法がある。キーキャップに貼るシールが売られているのだ。ただの紙のシールではなく、指が触れても痛みにくく、打鍵感を損なわないような加工がされている。そうした道具を利用することで、英語配列キーボードを日本語環境で快適に利用することができる。
実は、この Freestyle2 を購入する時、悩んでいたことがある。左右分離型のキーボードとして、完成品を買うかどうかである。ちょうどその頃、日本のプログラマー界隈では、
自作キーボードの流行が始まろうとしていた。
現在、同人誌即売会の技術系ブースに行くと、自作キーボードやその製作本を出展しているサークルが、かなりの数ある。その数は、ここ数年で一気に増えた。それだけではない。「
遊舎工房」といった自作キーボードのショップや、「
天下一キーボードわいわい会」といった専門イベントも存在する。こうしたムーブメントは、記事にもまとまっている(参照:
ITmedia NEWS /
ITmedia NEWS)。
おそらく、日本で大きく話題になり始めたのは2016年前後、
ErgoDox の名前を聞き始めたあたりからだ。ぽつぽつとブログや記事などで名前が出てきて私も興味を持った。しかし、部品を輸入して組み立てるという話を読んで尻込みした。すぐに使いたい道具なのに、作るのに失敗すれば仕事が止まると思ったからだ。
実はこの頃、完成品を販売する
ErgoDox EZ が、Indiegogoで資金を集めて立ち上がっていた(2015年3月)。しかし、当時の私はその存在を把握していなかった。
そこから3年、2019年1月13日には、前述の日本初の自作キーボード専門店「遊舎工房」がオープンしている(参照:
ITmedia PC USER)。その間、わずか3年である。短い期間で、自作キーボードは大きな盛り上がりを見せた。
利用者が多くなると、部品の調達が容易になる。またノウハウも蓄積されていく。つまり、新たに作ろうとする人の参入が楽になる。海外から輸入……と考えていたのが嘘のように、現在では国内の通販や実店舗で購入可能になっている。
自作キーボードは、プログラマーの人が多く作っている印象がある。おそらく、物作りという面で、相性がよいのだろう。ハードルが下がれば、普通の人もキーボードを自作するようになるかもしれない。パソコンのキーボードが壊れたときに、出来合いのものを買うか自作するか、まず考える時代が来るかもしれない。
<文/柳井政和>