現在メキシコで最凶となっているカルテルCJNGに対抗すべく、他のカルテルが団結して200人の殺し屋を送り込む

mexico麻薬戦争

SNS上にアップされた殺し屋集結の模様

 メキシコの麻薬組織カルテルで現在最も勢力を振るっているのがハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)である。リーダーのネメシオ・オセゲラ・セルバンテス(通称エル・メンチョ)は次の「麻薬王」になるだろと米国麻薬取締局(DEA)が見ている人物だ。この2年間で3つの州にも勢力を拡げ、現在32ある自治州の内の25州で活動している。

最凶カルテルが地方のカルテルのシノギを横取り

 最近のメキシコではカルテルが分裂する傾向にある中にあって逆に勢力を拡大しているのが狂暴なCJNGである。米国ではCJNGを同じく狂暴で急成長したイスラム国と比較している。CJNGが勢力を伸ばすことによって縄張り争いから他のカルテルとの対立も激しくなっている。シナロアもその対立しているカルテルのひとつだ。  CJNGに対抗すべく他のカルテルが団結した動機となったのが、グアナフアト州で石油パイプラインから石油を抽出し転売して利益を稼いでいた地元カルテルのサンタ・ロサ・デ・リマのシノギを横取りするかのように進出して来たのがCJNGだからである。  特に、グアナフアト州でこの抽出による盗難ビジネスが盛んになったのはメキシコ最大の石油会社ペメックス(PEMEX)のパイプラインの3分の1が同州に設置されているからだ。  ところが、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(アムロ)が大統領に昨年12月に就任してから彼が最初に取り組んだのがパイプラインからの石油の抽出を防止させることであった。そこで、パイプラインによる石油の供給をやめてタンクローリ車で石油を輸送するようにした。ということで、この石油の抽出は7割減少した。それに代わるシノギとなったのが誘拐、強盗、ゆすりなどである。  例えば、セラヤ市のホテルではカルテルに毎月2500ペソ(14000円)を納めるようになっている。それを拒否すれば何らかの妨害を受けることになるからである。(参照:「Infobae」)

地元政治家や警察を買収し、治安を悪化させるだけのCJNG

 CJNGが同州でも次第に支配を強めて行った背景には地元の政治家や警察の幹部との絆を強めていったからである。資金力のあるCJNGは彼らに賄賂を配るのは得意である。(参照:「El Espanol」)  グアナフアト州は比較的犯罪の少ない州であったがCJNGが進出して来てから地元カルテルとの衝突などもあって殺害事件も急増して行った。2006年は242人が殺害されたのに対し、2009年404人、2012年771人、2016年961人、2017年1096人、2018年4282人という恐ろしいほどの殺害被害者増加率となっている。
次のページ
最凶カルテルに対抗して他のカルテルが共闘
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会