90sの中頃から隆盛を誇ったアメリカ西海岸のポップ・パンク・ムーヴメント。あまりにキッズに受けてしまったがために揶揄もされたジャンルではあったが、シーンの中核を担ったバンドたちにはそれぞれ強いポリティカルな主張があった。中でも、インディ・ベースでの活動に強いこだわりを持ったNOFXはいまもって、アメリカのロック界におけるリベラルの代表として知られている。
ポップ・パンク・ブーム時における彼ら最大の代表作となった本作でも、人種差別や格差社会に関して無関心でいる政府や国民を批判した「Perfect Government」、そして、彼らの最大人気曲の「Don’t Call Me White」で、ユダヤ人としての差別を受ける彼らの被害意識を「俺を白人と呼ぶなよ」と歌うことによって、アメリカの白人中心社会を巧みに皮肉っている。彼らは今日でもロック界におけるアンチ・トランプの代表的論客でもある。
『Everything Must Go』Manic Street Preachers (1996)
『Everything Must Go』Manic Street Preachers (1996)
’90年代のUKロックのシーンにおいて、もっともポリティカルなバンドといえば、マニック・ストリート・プリーチャーズ。デビュー以来、その労働者の観点になった左翼的な楽曲ポリシーは一貫しているが、それが最も強く出たのは、バンドの危機を迎えていた本作だろう。
このアルバムの前年、彼らは歌詞を担っていたギタリスト、リッチー・エドワーズを“失踪”という形で失った。バンドそのものの死活問題でさえあったが、このアルバムのファースト・シングルの「A Design For Life」で彼らは、たとえリッチーを失っても、労働者の気持ちを代弁する姿勢に一点の曇りもないことを証明し、ファンの共感を強固なものとした。
また、リッチーの失踪を受けて、本作での楽曲群を含め、この後の彼らの詞には「人生との戦い」が色濃く表れるようにもなる。彼らは2001年にはキューバで最初にライブを行ったバンドにもなった。
<取材・文/沢田太陽>