見渡す限りの床に、
おびただしく長い髪の毛が散乱している。白髪または銀髪ともとれるのだが、問題はその量や根本の状況。
ブチブチと頭皮から引き抜かれていたことが伺えるのだ。
また、髪の毛と同様に散乱となっていたのは、
使用済みのトイレットペーパー。
どうやら大便を漏らしては拭き、それらをそのまま周囲に投げ捨てるという荒廃生活が続いていたようだ。
進む廊下にはインスタント食品の残骸や生活ゴミが散らばり、壁やドアには債務者に蹴破られたのであろう穴あきが散見される。
キッチンには嘔吐物の付着がそのまま残されており、トイレには
何回分かも把握できない大便が溜め込まれ、床にまで溢れかえっていた。
いずれの痕跡からも債務者が強いストレスに晒され、セルフネグレストに近い状況に陥っていたことが見て取れる。
そんな債務者女性の生業、それが“夢の職業”「ゲーム実況者」だ。
どこも惨状の続く室内ではあったが、配信部屋だけは大便ゴミに侵されていなかった――。
ゲーム実況者を取り巻く環境として、大手サイトが収益化に関するレギュレーションを厳しく改め、2018年後半より2019年前半にかけ人気ゲーム実況者が相次いで収益化の対象外措置を受けるという動きがあった。
この非収益化を嫌気したゲーム実況者の引退宣言が相次ぐという派生騒動もあったが、今回の債務者も同様にこの改定を起因とする破綻に陥ったのかどうかは定かでない。
ただ、タイミング的な要素はこれらを連想させるものだった――。
「YouTuberなどの動画投稿者」「プロeスポーツプレイヤー」……。
確かに一時期は高級マンションの最上グレードを購入出来るほどの実入りがあったのであろう。
しかし、“好きなことで生きていく”が長続きすることはなく、最終的には激しいストレスに晒され悪夢のような破綻。
芽を出すことも難しく、芽が出たところでプラットフォームの急激な舵取りに翻弄され続ける過酷で儚い職業。これが“夢の職業”「YouTuberなどの動画投稿者」の見えにくい正体でもある。
12月10日、渦中の大手動画サイトが“独自の裁量で採算が合わないと判断したアカウントを閉鎖できる”よう利用規約を改めるとの情報もあり、動画投稿者の間に不安が広がっている。
安易にぶら下げられる夢。掴まんと飛びつくもなかったことにされる夢。
マンション販売、動画プラットフォーム。いずれも夢を提示しユーザーや消費者の行動を促している部分がある以上、夢をぶら下げる側にもリスク説明の徹底や生活者の保護という責任を負わせるべきではないだろうか。
<文/ニポポ>