まるで“終身刑”。被収容者を凶悪犯かのように扱う入管の非道

長期収容に絶望して、入管の中で6回の自殺未遂

ベヘザドさん

残された2週間で、自分の想いを必死に言葉にするベヘザドさん

 イラン人のベヘザドさんとクルド人のデニズさんは、同じ日の10月25日に解放された。デニズさんは以前、仮放免されて2週間で戻され、今回は2度目の仮放免だ。ベヘザドさんは3年10か月もの長期収容で、ハンストの末にやっとのことで解放されたのだった。彼らもまた、わずか2週間のみの解放となった。  2人は残された2週間で、収容にあらがうためにできる限りの行動を起こした。11月2日、市民団体「FREEUSHIKU」主催のもと、新宿アルタ前で多くの人たちが集まる中、苦境を思い思いにスピーチをしたのだ。  ベヘザドさんは「緊張して話がまとまらない」と言いつつ、こう発言した。 「長期収容が問題で死者も出ている。ミサイルで殺される命、拉致されて殺される命、自殺する収容者。この命に違いがありますか?」  デニズさんは日本人の妻への思いを語った。 「10年以上結婚しているのに、夫婦として認められない。難民としても認めてもらえない。入管の中で6回、自殺未遂をした。奥さんのために本当は(自殺を)したくないのに、収容されると心が弱くなり、ついやってしまう。だけどトルコには絶対に戻らない。私の居場所は奥さんだけ」
デニズさん

記者会見で収容の恐怖、残された妻への想いなどを語るデニズさん

 11月5日、デニズさんは弁護士会館にて、弁護士と緊急記者会見を開いた。デニズさんは「安定剤や睡眠薬を飲んでも眠れることなく、それを近くで見ている妻もまた苦しんでいる」と語った。  さらには、3年以上の収容で右目の痛みをずっと訴えていたが、治療を受けることなく悪化。今回の解放で病院に行き検査をすると、右目の眼球に傷が見つかった。「右眼網膜血管閉塞」と診断され、診断書には「改善の見込みはない」と書かれていた。

いまのやり方は、被収容者を“終身刑”にしているに等しい

デニズさんの右目の診断書

デニズさんの右目の診断書。入管の医療放置により、改善の見込みはない

 大橋毅弁護士はと現在の収容のありかたを、非常に危惧しているという。 「法務省は『被収容者の43%は刑事罰を受けた経験がある』という理由で予防拘禁するのは非常に危険。残りの人たちは刑事罰を受けていないし、罰金刑や執行猶予の人だっている。今のやり方はそれだけで“終身刑”にしているに等しい。  法務省は、刑事罰を受けた人の社会復帰や、再犯しないように社会で受け入れていくことを謳っているのに、『犯罪者は危険だから社会から隔離するべきだ』と言い出すのは、差別の助長であり、レッテル張りだ。  こんな危険なことを外国人でやるならば、いずれは日本人に対してでも起こりうるのではないだろうか」
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2週間だけの自由でも、一生忘れない
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