他人のツイートをリツイートしたら名誉棄損!? 橋下徹氏をめぐる裁判の異様な判決(3)

橋下氏の幹部叱責の根拠が崩れている

橋下徹氏2 元ツイートが問題にした、橋下氏による府幹部に対する激しい叱責は2010年9月14日の府部長会議で行われた。  橋下氏は同年9月5日から8日まで台湾を訪問した。橋下氏は台湾訪問によって中国との関係が悪化することを懸念し、台北では台湾の閣僚とは会わないなどの方針を事前の会議で決めていたのに、「現場の一職員」が府の方針を無視して、閣僚との会合をセットしていたと非難した。  橋下氏は部長会議で「今回の所管である商工労働部が準備した当初の日程を見ると、要人との面談まで設定されており、大変驚いた。当初言っていたリスクの話はどうなったのか」「府では、台湾とは民間交流の範囲内という外交方針を決めていたはず。あれだけリスクを言っていたのに、いざ行くとなると全く無くなるのはどういうことか」などと叱責した。  岩上氏とIWJ編集部は、独自の調査で、橋下氏が訪台前の府内の会議で訪台に関した決定を全くしていないことを突き止め、橋下氏も証言で「部長らを集めた会合だったかもしれない」と曖昧な証言しかできなかった。

野田正彰・有田芳生両氏の勝訴との乖離

 橋下徹・前大阪市長が、月刊誌『新潮45』2011年11月号の「大阪府知事は病気である」と題した記事で「人格障害と言ってもいい」などと書かれ名誉を傷つけられたとして、出版元の新潮社と野田正彰・前関西学院大学教授(精神医学)に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は15年9月、新潮社と野田氏に110万円の支払いを命じたが、大阪高裁は請求を棄却。最高裁2017年2月、橋下氏の上告を退けた。  また、ツイッターの投稿で名誉を傷つけられたとして、橋下氏が有田芳生参院議員に500万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は9月19日、橋下氏の上告を退ける決定をした。橋下氏の敗訴とした1・2審判決が確定した。有田氏は2017年、橋下氏が情報番組に1回だけ出演して降板させられたと投稿していた。  この二つの訴訟では、「意見や論評の範囲内」「適当と認められる範囲内」として橋下氏の主張を退けている。  これらの判決に比べると、末永裁判長の名誉毀損認定は正当と言えるだろうか。  この訴訟の控訴審では、N参事がなぜ死ななければならなかったかが焦点になる。大阪府では橋下氏が知事になった後の2010年に職員7人が自殺している。それまでの府庁では自殺者は年間1人前後だった。橋下氏に叱責された職員が救急搬送される事件も起きている。  岩上氏側は、N参事がなぜ自殺に追い込まれたかを全面的に争うことになるだろう。この裁判を契機として、橋下知事時代に何があったのかを明らかにしてほしい。 <文/浅野健一>
あさのけんいち●ジャーナリスト、元同志社大学大学院教授
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