米エプソン、互換インクカートリッジをブロックして訴訟に。脱消耗品ビジネスは果たせるのか?

エプソンのプリンタ

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米エプソン、互換インクカートリッジをブロックして訴えられる

 先月の下旬のことだが、アメリカでエプソンが消費者に訴えられた。理由は、インクジェットプリンターのファームウェア(制御用のプログラム)のアップデートで、ユーザーに無断で、互換インクカートリッジの使用をブロックしたからだ(参照:The Register)。  互換インクカートリッジを利用していた人は、ある日突然プリンターが使えなくなったわけだ。それも、購入後にいきなり動作を変更して禁止したわけである。憤りたくなるのも分かる。  しかし、プリンター会社側にも言い分があるだろう。他社のインクカートリッジを使われるとビジネスが成り立たないと。そうした状態になるのは、プリンターがハードウェアではなく、その機械の上で利用する消耗品で儲けるビジネスモデルになっているからだ。  こうした消耗品で稼ぐ方式は他にもある。その中でも、インクジェットプリンターは、その代表的なものとして知られている(参照:消耗品収益モデルの陥穽:ビジネスモデルの社会的作用に関する探索的事例研究)。

家庭用インクジェットプリンターの歴史

 それでは少し、家庭用インクジェットプリンターの歴史を見てみよう。インクジェットプリンターの起源は、1867年のケルビン卿まで遡るとされる(参照:食品管理に活用される産業用連続型インクジェットプリンタケルビン卿の発見)。その後、1958年には最初の原理特許登録がなされ、1964年には実用的なインクジェット技術が発明されている(参照:赤門マネジメント・レビュー)。  実用的な家庭用インクジェットプリンターが商品化されたのは1984年。ヒューレット・パッカードからは、サーマル方式(加熱によるインク噴出)の「HP ThinkJet」が発売された(参照:HP Computer Museum)。こちらの価格は495ドル。当時、1ドルは約250円だったため、11万5000円ほどの価格だった(参照:日本銀行)。  同年、エプソンからはピエゾ方式(圧電素子の変形によるインク噴出)の「IP-130K」が発売された(参照:エプソン)。こちらは、JIS漢字第二水準機で、51万円だった。かなり高額のものだった。  また翌1985年には、キヤノンがバブルジェット方式(加熱によるインク噴出)の「BJ-80」を発売している(参照:キヤノングローバル)。こちらは約17万円だった(参照:知的財産戦略によるイノベーションの専有可能性)。  ヒューレット・パッカードは、1988年には普通紙対応のインクジェットプリンター「HP DeskJet」を発売する(参照:HP Computer Museum)。こちらは995ドルで、当時、1ドルは約125円だったため、12万5000円ほどの価格だった。さらに1990年には「DeskJet 500」を投入する。こちらは729ドルと値が下がり広く普及した(参照:HP Computer Museum)。  同じ1990年、キヤノンは「BJ-10v」を発売する(参照:キヤノン)。7万4800円で、バッテリー駆動ができ、持ち歩ける機種ということでヒットした(参照:日経 xTECH)。この「BJ-10v」は、インクヘッドをカートリッジとともに交換する方式で、家庭でもメンテナンスが容易になり、製品の信頼性を上げた。  当時エプソンはかなりの危機感を持っていたことが、技術開発をおこなっていた社長のインタビューから分かる(参照:PC Watch)。エプソンでは、高精細なマイクロピエゾを開発した。そして1993年に、その技術を搭載した機種「MJ-500」を市場に送り込んだ(参照:エプソン高精細インクジェット・プリンタの開発)。  このマイクロピエゾの技術は、インクを加熱して気泡を膨らませて射出するサーマル方式/バブルジェット方式と比べて、インクのコントロールに優れていた。また、熱を用いないので、インクの変質を気にする必要がなく自由度が高かった。  その特性を最大限に活かした製品として、エプソンは1994年に「MJ-700V2C」を出す。720dpiで精細なカラー印刷ができる機種だ(エプソン)。値段も9万9800円と、10万円を切っていた。その後のインクジェットプリンタの方向性を決定づけた機種だと言える。
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脱消耗品ビジネスへの挑戦は成功するか?
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