私財を投じて筋萎縮性側索硬化症(ALS)の問題に取り組む伝説の銀行マン

電動車椅子イメージ

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 フランシスコ・ルソンという人物をご存知だろうか? と言っても、日本の皆さんはおそらくほとんどご存じないだろう。  スペインでは、ここ数日彼のことが話題になっている。というのも、スペインの代表紙である『El Espanol』が社会平等、地球維持、団結といった分野で貢献している人や組織に贈る「エル・エスパニョル・レオン賞」を彼が受賞したからだ。

伝説の銀行マンを引退後に襲った病

 フランシスコ・ルソンは、スペインで銀行マンとして活躍した人物であった。現在スペインの3大銀行のひとつバンコ・ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア(BBVA)の創設に貢献した人物である。その後、現在スペインの最大銀行バンコ・サンタンデールの副頭取としてラテンアメリカでの営業を担当し同銀行の収益のおよそ5割はラテンアメリカでの営業から挙げるまで業績を伸ばしたという実績を持った人物でもあった。2013年に6500万ユーロ(70億円)の退職金を貰って悠々自適の生活を送ることが約束されていた。52%の税金はちゃんと納めた。ところが、その10か月後に筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹っていると診断されたのである。  ALSは手足などを動かす筋肉や呼吸に必要な筋肉が萎縮して力がなくなっていく病気。筋肉そのものが病気になるのではなく、それを動かしている神経が侵される病気だ。視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれるが、呼吸筋は次第に萎縮して呼吸困難になって行く。 スペインでは現在4000人のALS患者がいるという。病気になってからの寿命は3-5年と言われているが、ルソンは6年目で現在も頭脳明晰だ。12年そして14年存命の人もいるそうだ。  ホーキング博士がやっていたのと同じようにコンピューターボードの前で目まぐるしく瞳を動かして言いたいことを画面に表現しているのである。  もちろん、ルソンは非常に裕福である。経済的に恵まれているため、24時間介護士が交代で付き添っている。しかし、経済的に余裕のない人にはルソンが享受しているような介護を受けることができないのが現状だ。  そんな現状を、病に罹ったルソン自身が変えようと立ち上がったのだ。

私財を投じて同じ病に苦しむ人の尊厳のため立ち上がる

 いまの医学ではALSが回復する可能性は低い。しかし、ルソンはこう考えた。 「将来ALSが治る病気になって欲しい。この病気を患っている人たちの尊厳が守られるような看護体制が保障されるようにしたい」  そんな願いをもって、私財を投じて「フランシスコ・ルソン基金」を創設したのだ。  彼のプロジェクトには、スペインの3大銀行のひとつラ・カイシャ(La Caixa)が参加している。同銀行は、300万ユーロ(3億5400万円)の予算で治療研究プロジェクトを構築した。この病気の治療経験を持つ医師や研究者に奨学金を提供して治療の開発にあたるというものである。  ちなみに、彼が現役時代に勤務した3大銀行の2つBBVAとサンタンデールが彼のプロジェクトに参加していないというのは皮肉である。(参照:「El Pais」、「Voz Populi」)
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「ALSのお陰で自分の持っているものの価値を再評価できるようになった」
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