グレタさん、「気候変動問題にもう賞はいらない」と『環境賞』辞退で話題に

グレタ・トゥーンベリさんが北欧理事会の『環境賞』を辞退

 9月の国連気候行動サミット(ニューヨーク)で行った熱のこもったスピーチで世界中の人々の心をつかんだ16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん。  環境問題における彼女の大きな功績を称え、北欧理事会は彼女に『環境賞』(The Nordic Council Environment Prize) を授与することを決めた。この賞は、北欧の5カ国3地域の政府等が加盟する国際組織「北欧理事会」が年に1回、選出している5つの賞のうちの1つだ。賞金は日本円にして約560万円にもなる。  ところが、グレタ・トゥーンベリさんはこの賞を辞退した。米カルフォルニアを移動中の彼女がInstagramに投稿したコメント によると、辞退の理由はおよそ次のようなものだったらしい。
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I have received the Nordic Council’s environmental award 2019. I have decided to decline this prize. Here’s why: “I am currently traveling through California and therefore not able to be present with you today. I want to thank the Nordic Council for this award. It is a huge honour. But the climate movement does not need any more awards. What we need is for our politicians and the people in power start to listen to the current, best available science. The Nordic countries have a great reputation around the world when it comes to climate and environmental issues. There is no lack of bragging about this. There is no lack of beautiful words. But when it comes to our actual emissions and our ecological footprints per capita – if we include our consumption, our imports as well as aviation and shipping – then it’s a whole other story. In Sweden we live as if we had about 4 planets according to WWF and Global Footprint Network. And roughly the same goes for the entire Nordic region. In Norway for instance, the government recently gave a record number of permits to look for new oil and gas. The newly opened oil and natural gas-field, ”Johan Sverdrup” is expected to produce oil and natural gas for 50 years; oil and gas that would generate global CO2 emissions of 1,3 billion tonnes. The gap between what the science says is needed to limit the increase of global temperature rise to below 1,5 or even 2 degrees – and politics that run the Nordic countries is gigantic. And there are still no signs whatsoever of the changes required. The Paris Agreement, which all of the Nordic countries have signed, is based on the aspect of equity, which means that richer countries must lead the way. We belong to the countries that have the possibility to do the most. And yet our countries still basically do nothing. So until you start to act in accordance with what the science says is needed to limit the global temperature rise below 1,5 degrees or even 2 degrees celsius, I – and Fridays For Future in Sweden – choose not to accept the Nordic Councils environmental award nor the prize money of 500 000 Swedish kronor. Best wishes Greta Thunberg”

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・気候変動運動にこれ以上の賞はいらない。必要なのは、政治家や権力者が現在最良の科学に耳を傾けること。 ・北欧諸国は、こと気候問題や環境問題においては世界中から高く評価されている。そのことを自慢する声は十分すぎるほどだ。美しい言葉の数々も十分すぎるほどだ。しかし、現実の(CO2)排出量や1人当たりの環境負荷量のこととなると、話はまったく違ってくる。 ・北欧の全ての国が署名した“パリ協定”は、平等性に基づいている。すなわち、豊かな国こそが活動をリードしなければならない。我々は、最も多くのことを実行できるだろう国に属している。しかし、我々の国はまだ、基本的に何も実行していない。  この中に「気候変動運動にこれ以上の賞はいらない(the climate movement does not need any more awards)」というコメントがあるが、実際、グレタさん自身、過去に色々な賞を受賞している。例えば、  2018年11月 Fryshuset scholarship of the Young Role Model of the Year  2019年3月 German Goldene Kamera Special Climate Protection Award  2019年9月 Right Livelihood Award などだ。  恥ずかしながら筆者はこれらの過去の受賞のことを知らなかったが、今回の“受賞辞退”の大報道をきっかけに、さかのぼって知ることになった。賞を受賞した場合よりも辞退した場合の方が大きく報じられることはままあるが(辞退する方がずっと珍しいからだろう)、今回のグレタさんの場合も、どうやらそのパターンになったようだ。

ノーベル平和賞受賞ならどうする、どうなる

 いささか気が早いが(2019年のノーベル平和賞は、10月11日にエチオピアのアビー・アハメド首相氏に決定)、グレタさんは既にノーベル平和賞の下馬評にもあがっている。それどころか、今年3月には3人のノルウェー人弁護士がグレタさんをノーベル平和賞に推薦したり 、10月には2011年のノーベル平和賞受賞者リーマ・ボウイーが「グレタさんと、米国で銃規制改革運動を提唱した米国の高校生たちがノーベル平和賞を共同受賞することを心から望んでいる」という趣旨の発言をしたり など、具体的な動きも出てきているのだ。  (大きなお世話かもしれないが、)もしも本当にノーベル平和賞を授与されることになったら、グレタ・トゥーンベリさんはどうするだろうか。『環境賞』と同じく辞退するだろうか?
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ノーベル賞を辞退した人、渋々もらった人
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