NHKニュースのTwitter
災害の最中、発信された「ひらがな」のメッセージが物議
今年、日本列島に襲い掛かった数々の台風。その影響を受けたのは日本人だけではない。労働者や旅行者として在留・滞在する多くの外国人も同じく恐怖と混乱の中にいた。
9月上旬、千葉県を中心に甚大な被害をもたらした台風15号では、日本の玄関口である成田空港もが完全に麻痺。その混乱ぶりは、連日テレビで放送された通りである。
台風が関東を襲った翌日の午前中、筆者が出張先から成田へ降りると、空港内にはいたるところに、配布された寝袋にくるまる外国人の姿があった。
韓国から来た若者4人組は、「
空港職員からのアナウンスや案内板がほとんどなく、韓国語を話していた近くの人から情報を得た」とのこと。
また、仕事で来日したエクアドル人男性は、「地震が多い国という認識はあったが、まさか台風で足止めを食らうとは思わなかった。1人だったため、場所取りが大変だった。
情報はツイッターを頼った」と話していた。
その15号からわずか1か月後。傷の癒えない日本列島に19号が直撃し、かつてないほどの雨風を各地にもたらしたが、この19号は、15号とは別の意味で「外国人への発信」が話題となった。
NHKニュースのツイートである。
“【がいこくじん の みなさんへ】
たいふう19ごう が 12にち~13にち に にしにほん~きたにほんの ちかくに きそうです。 たいふう19ごう は おおきくて とても つよいです。 き を つけて ください。
(↓よんで ください)⇒NHKニュースへのリンク”
(
NHKニュースのツイートより)
この通り、全て「
ひらがな」での発信だったのだ。これ対し当初、一部の日本人からは、
「これ、外国人馬鹿にしてないか?」
「世界共通の英語で書けばおk!全部ひらがなて別に外人は赤ちゃんじゃないんだから」(原文ママ)
「NHKってバカなのかな?ひらがなじゃなくて英語、中国語、韓国語で発信しなよ。」
「ついったーで にほんごのじょうほうを あつめているようながいこくじんに、こんな にほんじんでもよみづらい ひらがなひょうきが ひつようですか?」
といった否定的な意見が相次いだが、しばらくすると「ひらがなは1週間もあれば習熟出来る簡単な文字らしい」、「日本に住んでいる外国人の為に、やさしい日本語=ひらがな なんですね」など、同ツイートを擁護する意見が増加。大きな議論を呼ぶ結果となった。
今回のNHKのひらがなツイートは、日本語教育の観点で見ても、目線を落としたいい試みで、ましてや外国人を馬鹿にしたものでは一切ない。
総務省が今年7月に発表した2019年1月1日時点の人口動態調査によると、国内の外国人の人口は、過去最多の266万7199人。
一方、厚生労働省が発表した2018年10月現在の外国人労働者数は146万人で、そのうちの72%以上がアジア圏出身者だ。
また、その半数近くが特定技能や技能実習生、留学生アルバイトであることに鑑みると、英語が分からずとも「ひらがなレベルの日本語なら分かる」とする外国人が大きな割合を占めることが考えられるのだ。
また、日本で使用される「ひらがな」「カタカナ」「漢字」のうち、最初に学ぶのはひらがな。
学習意欲のまだあるうちに学べることも、高い習得率の理由の1つだが、さらには、存在意義が曖昧なカタカナ、複雑な書き順、当て字読みなどトリッキーさ満載の漢字とは違い、ひらがなは日本語の文字の中でも最も「素直」。
そのため、日本語を途中で挫折してしまった外国人でも、一通り「読むことはできる」という場合が多いのである。
しかし、一概に「ひらがなだから外国人にやさしい」というわけでもない。
今回のNHKのツイートについて、現役の日本語教師11人に話を聞いたところ、「
文章はより短文にして漢字を使用し、その上部、または
カッコでふりがなを振ったほうがいい」という意見が相次いだ。
理由は次の通りだ。