他方、宇宙ビジネスに携わる山崎氏は、宇宙旅行時代の到来を踏まえて、正しい知識を身につけることの重要性を説いた。
「全宇宙にある星は、重量の中で引き合ってバランスの中で存在している。無重力状態で浮いているわけではなく、極端な話を言うと、月まで階段があれば登っていける。小学校で習った宇宙=無重力とは全く真逆の世界だという意識に変えていかないとこれからの宇宙旅行時代についていけなくなる」
世界的に名の知れる起業家のイーロンマスクやリチャードブランソンが宇宙ビジネスに参画したり、ドバイや中国が宇宙開発に乗り出したりと、誰もが宇宙へ行ける時代の到来が少しずつ現実味を帯びてきている。
宇宙へ行くことが当たり前になれば、そこで何をするかが求められる世界になっていくのではないだろうか。
期待高まる宇宙開発。しかし、有史以来、争いを繰り広げてきた人類はどこかで過去の反省をしなければならない。場所を宇宙に移したところで、また争いを起こしてしまうだろう危険がある。
「宇宙に所有やお金の概念を持ってきてしまうと、地球が歩んできた歴史のように争うことになる。あらゆるものをシェアし、物々交換で成り立つような社会を創造し、シェアリングエコノミーの世界を作っていくのがベストだと思っている」(山崎氏)
自身がエンタメ出身でヒーローものを演じた経験もある伊勢谷氏。「悪に見立てた存在である権力者やリーダー、策謀者など誰かを倒すことで達成感を得る」という考えは、人類の創世記からある本能なのだという。
この「誰かを倒す」という考えを改め、人類の理性を高めていく必要があると説いた。
「人間の本能を活かしても、世の中は良くならない。人間社会の秩序は理性で成り立っている。これまでの争いの歴史を省みて、どうすれば世の中が変わるのかという発想を持ち、理性を成長させることが本質的に大事である」
人間の理性を成長させるためには、デンマークのように医療や教育を無償にした社会を目指すことが重要だという。お金がないために医療を受けられなかったり、私立に通って水準の高い教育を受けられなかったり。
このような課題を国が負担すれば、もっと理性を成長させるベクトルに向くのではないだろうか。
お金を稼がないと、身の回りの生活が危ぶまれ、自分の生活で精一杯になってしまう。医療や教育といった社会インフラが国によって保障され、安心して生きられる社会になっていけば、今後人類はどうやって生きるべきかと考えられる人も増えてくるのかもしれない。
<取材・文/古田島大介>
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。