ライブハウスは「60万円」から!?「渋谷文化」にも訪れる「ジェントリフィケーション」

ある渋谷ライブハウスの閉店

最終営業日のライブハウス「DESEO mini」

最終営業日のライブハウス「DESEO mini」(撮影:うめうめ)

 昨年11月30日、渋谷区桜丘にある人気ライブハウス「DESEO mini」が熱気に包まれた。  この日行われたのは、アイドルグループ「tipToe.」と「HAMIDASYSTEM」の合同ライブ。ライブハウスは満員でエネルギッシュなステージとなったが、会場の外は少し淋しい雰囲気が漂う。  実は、このライブハウス「DESEO mini」がある場所は渋谷区桜丘。この桜丘地区では2018年末から大型再開発が行われることになっており、周囲の建物はすでに殆どが空き家となっていた。この場所は両グループにとってデビュー公演をおこなった大切な場所であったが、ここもこの日限りで移転のために閉館してしまうのだ。  この11月30日に渋谷区桜丘で閉館(移転含む)を迎えたライブハウスは実に3館もあった。最後のステージを飾った「tipToe.」は「一緒に青春しませんか?」をコンセプトとした渋谷系ギターポップサウンドを特徴とするアイドルグループで、初期には桜丘のライブハウスで公演をおこなうことが非常に多く、「桜丘で成長してきたアイドル」の1つだった。それだけに、メンバーも「思い入れもあるし、通い慣れた場所だから淋しい」と話す。  渋谷が「再開発の槌音が絶えない街」となって久しいが、その一方で再開発によるこうした「渋谷文化を発信してきた場所の喪失」を惜しむ声に加えて、地域の「ジェントリフィケーション」(Gentrification/再開発などに起因する地域の高級化)を危惧する声もあがっている。
「音楽・趣味の街」としても知られた桜丘

「音楽・趣味の街」としても知られた桜丘。
この街区も現在は解体が行われており、多くの店舗は新天地に移転することとなった。

「音楽の街」桜丘から消えるライブハウス

 まずは今回の再開発の概要をおさらいしておこう。  渋谷区桜丘地区は渋谷駅西口から玉川通りの横断陸橋(通称:マンモス歩道橋)を渡ったエリアで、桜の名所としても知られていた。  桜丘は東京大空襲の際に焼失を免れたため狭い街路が多く、また駅からは横断陸橋を渡らないとアクセスできないため、駅チカながら家賃水準が比較的低かった。それゆえ、音楽関連店舗をはじめとして、ホビーショップや立ち飲み屋、言語に特化した語学教室など個性的でマニアックな店舗が数多く出店しており、渋谷文化の発信拠点となっていた。  しかし、その街路の複雑さ、そして防災面の不安もあり、2015年に東急グループ主導で桜丘東側エリアの再開発組合を設立。2018年末には東側の1期再開発エリアが立入禁止になったとともに、2期再開発エリアとして1期再開発エリアの西側でも再開発準備組合が設立された。1期エリアの完成は2023年度を見込んでおり、その完成後に2期エリアの工事が開始される予定となっている。
桜丘は桜の名所

桜丘は桜の名所としても人気を集めており、春には「桜まつり」が開催されている。
この街区は2期再開発エリアとなり、桜並木も近い将来見納めとなる。

 今回の再開発では、特に楽器店やホビーショップ、夜型飲食店などといった渋谷の「文化発信拠点」を担ってきた店舗の多くが桜丘から分散、もしくは閉店してしまったことは以前触れた通りだ。
1期再開発地区から移転を決めた店舗の地区別店舗数

1期再開発地区から移転を決めた店舗の地区別店舗数。(筆者作成)

 とくに、桜丘における「文化発信拠点」の象徴的存在が、多くの「ライブハウス」「音楽ホール」の存在であった。  桜丘に所在するライブハウスのキャパシティは最大で100~200人台程度、貸切利用料金はおおよそ1万円~10万円から。気軽に利用できる規模と料金であるため、ライブアイドルやインディーズ・アマチュアバンドはもちろんのこと、音楽ライブ以外にも動画配信イベントや趣味のイベント、トークショー、サークルの打ち上げなどに使われる例もあった。  こうした中~小規模のライブハウスは、入場料のほかに税込500円~600円のドリンク代を集めたり、酒類や軽食を提供することでかろうじて利益を確保しているところが多い。広域集約に有利な渋谷の駅チカでありながら、比較的地価・家賃が安い桜丘はライブハウスが集積しやすい条件の場所であった。しかし、その多くは再開発によって消えてしまう運命にある
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移転先が決まった店、決まらない店。分かれる運命
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