日韓関係が悪化する中、ソウルの「反日デモ」でフリーハグをやってみた

ずっと手伝ってくれていた韓国人の友だちに協力を断られる

 僕には韓国でフリーハグを行う際に、いつも手伝ってくれている韓国人の女友達がいる。でも、今回(今年の8月)に限っては「手伝うことはできない」と断られてしまった。その理由は、韓国国内ではいま「日韓友好」という雰囲気ではまったくないからだという。しかしこれは「フリーハグをするのは危険だ」という意味ではないと彼女は言った。  彼女は、いま日本人の僕が韓国でフリーハグをすることは「加害者側の善意の押し売りだ」と言う。それでも僕は、「現在政治的には対立している両国でも、『日韓友好』を願っている個人はいる」ということを、フリーハグを通して表現したいと思った。  この8年間いつも手伝ってくれていた彼女に断られてしまったことは、ショックだった。そして、いまの日韓問題の根深さを感じた瞬間でもあった。  とはいえ、それは彼女個人の意見だ。  今回の撮影を手伝ってくれた韓国人男性のジョーさんは、そういったことを一切言わなかった。ジョーさんは2年前、SNSで「動画に感動した。会いたい」とメッセージをくれて、1回だけ東京で一緒にご飯を食べただけの、けっこう薄い間柄だ。  でも今回、韓国へ行く旨をSNSに投稿すると彼はすぐにメッセージをくれた。 「ソウル支社に転勤になったので、フリーハグをするなら手伝えますよ」  実は、この時点でジョーさんってどんな人なのかという記憶はあまりなかった。それはここだけの秘密だ。

反日デモでフリーハグをしたほうが効果があるのでは!?

手伝ってくれたジョーさん

撮影を手伝ってくれた韓国人のジョーさんと作戦会議

 SNSで韓国に行くと表明したものの、反日デモの現場でフリーハグをしようと計画していたことは隠していた。ジョーさんにも誰にもその話をしなかった。  しかも、デモが行われる日にジョーさんは予定があるという。韓国に来る前から、その計画が実行できないことはわかっていた。それなら代わりの撮影者を見つければよかったのだが、そこまで自分自身は本気ではなかったのだろう。「まぁ、これも運命だ。やるべき時が来たら、すべてその通りになる」と勝手に自分で納得していた。  そのため、ジョーさんにはいつも通り「若者の多い場所でフリーハグを行いたい」と伝えていた。でも韓国でジョーさんに会ってフリーハグの戦略を立てていると、「自分が伝えたいことは反日デモでやったほうが最大限の効果を発揮できるのでは?」という話になった。でもまだこの時点でもジョーさんの予定があり、本当にやるかどうかは不確かだった。  普通「反日デモで日本人がフリーハグをする」なんて言ったら、絶対にまわりから心配される。「危ないことはやめろ」「何か起きたらいろんな人に迷惑がかかるんだぞ」なんて言葉がきっと飛び交うだろう。  そういう意見を聞くと、自分も不安になってくる。すると、悪いことが起きる想像ばかりしてしまい、行動を起こせなくなる。しかし、いくら素晴らしいアイデアが浮かんでも、行動しなければ意味がない。  もちろん誰かに相談することは大切だけれども、相談する相手は考えるべきだ。そして、ジョーさんはまさにその正しい相手だった。  彼は「反日デモのどの場所で行うか、そのために何をすればいいのか」など、建設的な話しかしなかった。だからネガティブなイメージが頭の中に入り込む余地はまったくなく、僕は常に平常心でいられたのだと思う。
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「反日デモ」ではなく、「安倍政権糾弾キャンドル集会」!?
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