ここまでで述べてきた様に、
自民党所属議員に疑惑が及びはじめた頃から「関電被害者論」は蔓延しはじめています。
さきに提示したモザイクコピペは、
2ページのうち65%にモザイクをかけるという不自然なものです。そのうえ「関電直結の暴力町政(初の共産党町議)(生けにえ)(土下座)仕組まれたワナー一瀬追い落とし劇(押し問答)」という見出しの箇所を
趣旨と全く正反対の「関電被害者論」の論拠と主張しています。これは
きわめて悪質な改竄にあたります。
その一方で、羊羹コピペにせよモザイクコピペにせよ、前衛82年8月号と不完全ながら原典指定がなされています。
この「関電被害者論」を無批判に流布した大学教員、ジャーナリスト、メディア人士は、大学図書館、公共図書館、大宅壮一文庫などの私設図書館から取り寄せれば簡単に原文を読むことができます。
原文を読むことは、このような人権が深く関わる事柄では必須というのが私が学究生活で得てきたことです。
なぜこのような簡単かつ必須の手順を取ることなく無批判に多くの人間の人権を踏みにじる行為をするのか、私には全く分かりません。しかもこれらの人々の中には、
日常的に「◎◎差別」という言論を対抗言論を抑圧するための武器として無根拠で流布する人が多く見られる事も今回の特徴です。
また、少なくとも高等教育の経験があるか、差別問題に若干でも造詣のある人ならば、「前衛」の60年代から80年代にかけての記事は、被差別部落問題に関しては要注意であることは常識です。共産党と部落解放同盟は激烈な対立関係にあったため、この件に関しての論調には、きわめて強いバイアスがかかることは絶対に忘れてはいけないことです。
「原発のある風景」は、優れたルポルタージュであり、「神本」と評されることすらありますが、80年代初頭の共産党機関誌「前衛」掲載記事であることも忘れてはいけないのです。前衛や赤旗は、きわめて優れた調査能力がある一方で、党派性も論調に強く影響しています。その党派性はきっちり見極めねばいけません。
関西電力大規模資金還流事件は、関西電力だけでなく地方政界、そしてついには中央政界、世耕弘成前経産相(現自民党参院幹事長)という原子力行政のど真ん中にまで波及していることを米系外電までが報じています*。腐敗した事業体と行政には原子力安全を担保する能力は全くありません。この事件を全く論外な屁理屈ではぐらかそうとする人たち、勢力が跳梁跋扈していますが、私はそれを絶対に許しません。
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元助役雇用の会社社長が世耕氏側に600万円献金、関電の取引先-2019/10/09 共同 – Bloomberg>
◆『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』~緊急特集・関西電力資金還流問題編2
<取材・文/牧田寛>