「日本のドラマで日本語を覚えた」辛い別れを乗り越えて2店舗持つに至った蘇州大餛飩店オーナー<越境厨師の肖像>

仕切り直しと奮起するも、さらに押し寄せる試練

 さぁ改めて仕切り直しだ!そう心新たに動き出そうという時に、再び試練が李さんに襲いかかる。 「日本に来てからずっと支えになってくれた義弟の病が発覚したんです。日本人の夫は仕事に追われており、世話をするのは私しかいませんでした。病院・店のこと・娘のこと(学校の宿題や習い事の送迎など)もあり、どれに対しても時間が足りなくて、なんとかこなしていましたが、どんどん気力も体力も失われていってしまいました」  もう辞めた方がいいかも--。店をたたむ選択肢が頭をよぎるようになったという。  それを感じ取ったのか、病床の義弟が李さんへ一言かけてくれた。 「これまでのせっかくの努力をゼロにしちゃダメだよ」  そして、それを最後の言葉に、この世を去ったという。  義弟の看病と最期の言葉・パワーを失った自分自身。それらの経験を通じた李さんは、「健康の大切さ」をひしひしと感じ、そのことを食材選び・皮作りのテーマに掲げ、再びワンタンの改良に取り組み始めた。

試練をこえ、誕生した5色のワンタン

 悲しい体験を乗り越えて李さんが作り上げたのは、見た目が美しいだけでなく、健康を念頭に素材までこだわりぬいた5色のワンタンだった。  5色のラインナップは、白:ナズナ(荠菜)・黄:コーン(玉米)・緑:キノコ(香菇)・ピンク:エビ(虾仁)・オレンジ:キムチ(泡菜)。店で選べる調理方法は「ゆで」「スープ」「焼き」の3つ。
5色の蘇州ワンタン

5色の蘇州ワンタン。写真は「ゆで」

焼きワンタン

焼き餃子風で日本人にもとっつきやすい「焼き」

スープ入りワンタン

鶏ガラで丁寧に出汁を取った「スープ」

 この他にも、こんなこだわりを詰め込んだ。 ◎地元埼玉の食材を活用 ◎季節によって餡に使う具材のバランスを調整 ◎餡に使う豚肉は、バラとモモ。機械を使わず包丁で刻むことで滑らかな口当たりに。 ◎スープワンタンのスープは、鶏ガラで丁寧にとった優しい味。 ◎キムチは、大阪出身の元スタッフから教わったおすすめのものを使用 ◎皮の色は野菜からとったもので着色料を使わない  5色ワンタンが動き出すとともに、口コミも広がりだし「こちらのワンタンが美味しいと聞いて」との声が増えた。  次いで日本駐在の人民日報インタビュー、さらには中国中央電視台4国際チャンネルの『華人世界』にも出演するなど中国メディアに続々登場したことにより、店舗近隣以外の遠方からの利用も急増したという。  義弟の遺言通り、途中までの努力をゼロにせず、挑戦することによって事態は好転へ。李さんの目に見えてくる景色が変わってきた。  スープワンタンをテーブルへ運んだ瞬間、その彩りや香りに歓声をあげ、食べ終えたらわざわざ李さんのもとへ来てお礼を言いに来てくれた人もいた。  子供たちが口にするなり率直に「おいしーい!」と言いながら頬張る様子。ワンタンを食べた人から喜びの声を聞けること。それが李さんの活力となる。
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好評を受けて新たな挑戦へ
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今回紹介した李さんのお店はこちらの2店

◎小手指「カフェダイニング 蘇(スー)
埼玉県所沢市小手指町1-15-11 アゼリア5 1階
04-2008-1188
営業時間 11:00-22:00

◎大久保「蘇園餛飩
東京都新宿区北新宿1-7-20 プロスペリタ新宿102
03-5330-1808
営業時間 11:00-22:00
(今後変更の可能性あり)

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