園田康博政務官の記者会見の手元資料。「トリチウム」と手書きされている
園田氏の飲水発言を受けて、フリージャーナリストたちは汚染水ひいては福島第一原発の情報公開に最大限利用しようとした。たとえば、2011年10月17日の共同記者会見で、筆者は次のように提案した。
「『汚染水をミネラルウォーターにすり替えた』と言われないため、園田政務官が福島第一原発へ行き、そこで汚染水を飲むしかない。我々も同行取材する」
園田氏は「現地で飲水することも検討する」と答えた。くり返しになるが、当時、報道機関は福島第一原発の現地取材を拒否されていた。
フリージャーナリストたちの追及が実を結んだのは10月24日。共同記者会見で汚染水の分析結果が公表されたのだ。それによると、トリチウム以外の放射性物質は検出されなかったという。
「なんだ。今と変わらないじゃないか」と思った読者もいるはずである。ところが、
政府・東電が汚染水に含まれるトリチウムの存在を明らかにしたのは、このときが初めてなのだ。
共同記者会見終了後、園田氏の手元資料を譲り受けた。「5/6号滞留水RO処理後の分析結果」という資料には、元素記号「3H」がわからなかったらしく、「トリチウム」と手書きで記入されていた。
このとき、
フリージャーナリストたちが園田氏に汚染水を飲むよう迫らなければ、トリチウムの存在は当分明らかにされなかったのではないか。
結局、2011年10月31日、園田氏は共同記者会見で「汚染水」とされるものを飲み、フリージャーナリストたちが要求していた福島第一原発現地での飲水と同行取材は実現しなかった。
しかも、飲水は記者会見場に記者クラブメディア(新聞、テレビなど)のみを呼んで行われた。筆者が記者会見場に入ると、園田氏が空になったコップを指差し、「飲んだぞ」という表情をした。
以上、振り返ってきたとおり、
政府・東電の情報公開の姿勢は非常に不信感を持たせるものだ。それは現在も変わらない。ここに
汚染水問題の本質があると私は思う。
<文・写真/寺澤有>