条件が変わっていく環境では「OODAループ」のほうが有効
「PDCAを回せ……」
会議や研修などで言葉を頻繁に耳にする「PDCAサイクル」とは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)を繰り返すこと(サイクル)。製品や業務をどんどん改善していく手法だ。
ただ、このPDCAサイクルは日本で作られたもの。ガラパゴス的に進化して「PDCAサイクルを回せばすべてうまくいく」かのようなPDCA神話ができあがってしまっている。「Plan(計画)」と「Check(評価)」に上司が延々と時間をかけて、何も動かないというのが日本の日常になりつつある。
「PDCAは万能ではありません。製品の品質を向上させることに焦点を当てた管理手法で、工場の品質管理の世界で、60年間支持されてきたのです」と語るのは経営コンサルタントの入江仁之氏。
PDCAは、環境がほとんど固定されている状態で、より高品質な製品を作るところで強みを発揮する。
「しかし、条件が変わっていく環境では『OODA(ウーダ)ループ』のほうが有効です」と入江氏は語る。
「OODAループは、アメリカ空軍大佐のジョン・ボイド氏が開発した戦略一般理論。今では、シリコンバレーの名だたる企業の現場で戦略の基本として定着しています」(入江氏)
自らの経験にもとづいて、状況に応じて臨機応変な対応を行う
OODAループとは、
・みる(見る、観る、視る、診る)-Observe
・わかる(分かる、判る、解る)-Orient
・きめる(決める、極める)-Decide
・うごく(動く)-Act
・みなおす(見直す)/みこす(見越す)-Loop
という、5つのプロセスからなる。
「OODAループとは、常に状況認識を見直していく思考法です。自分の世界観を持ち、その世界観を状況や相手に合わせて更新しながら、軍事でいえば『敵の戦闘意志』、ビジネスでいえば『相手(顧客)の思い』を探り、相手の心を動かすことで目的を確実に実現することです」(入江氏)
PDCAサイクルとの大きな違いは、状況に応じてOODA ループをショートカットし、その戦略は随時更新されるということだ。
「OODA ループでは多くの場合、『みる』『わかる』『きめる』『うごく』『みなおす』をフルセットで回すことはほぼありません。状況や問題に応じて『みなくても、わかる』『きめずに、うごく』といったショートカットのパターンを駆使します。だから速いのです。
自らの経験にもとづいて、臨機応変な対応を行うのです。数多くの情報や経験をインプットしておくことで、『こういうときには、こう動く』というパターンが蓄積されます。それで、あらゆるシーンに対して臨機応変な対応が可能となるんです」(同)