全国のパチンコ店が、一斉に鹿目まどかの誕生日を祝った謎

なぜ、パチンコ店がまどかの誕生日を一斉に祝い始めたのか

 実は「アイランド秋葉原店」には、昨年の10月3日にも長蛇の列が出来ている。土地柄と店のコンセプトと、遊技客の期待がこれほどまでにマッチングしている店は、日本にパチンコ店が一万店舗あれ、ここただ一店だけだと言っても過言ではない。  ただ今年が去年までの「10月3日」と違ったのは、「アイランド秋葉原店」だけではなく、全国津々浦々、多くのパチンコ店が「10月3日は鹿目まどかの誕生日」を謳いだしたことだ。  その背景にはこんな事情がある。  パチンコ店は、風営法(風俗営業等の規則及び業務の適正化に関する法律)によって「著しく客の射幸心を煽る行為」は禁止されており、出玉を謳う過度な広告宣伝は厳しく規制されている。  例えば、3が付く日は特別な日などと特定の日を宣伝したり、今日はこの機種が甘いですよと特定機種を示唆したりする行為もこれに当てはまる。特定日や特定の機種については、あくまで客の予想でなくてはならず、店側はそれを宣伝してはいけないのだ。  だから「誕生日」を謳った。  店側は10月3日に高設定を入れるとは言っていない。「魔法少女まどか☆マギカ」関連機種の示唆もしていない。  あくまで、アニメの主人公である「10月3日は鹿目まどかの誕生日」という事実を遊技客に伝えただけというロジック。これを「白々しいグレーな広告」と見る人もいれば、「遊び心」だと捉える人もいるだろうが、私は村上龍の「限りなく透明に近いブルー」ならぬ、「限りなく黒に近いグレー」と評したい。

推しキャラで釣るだけで出玉還元しなければ客は離れる

 この「版権キャラクターの誕生日戦略」は、「魔法少女まどか☆マギカ」に限った事ではない。今年度のパチンコ業界の最大のヒット機種と言われるパチスロ「Re:ゼロから始める異世界生活」の主要キャラクターである「エミリア」の誕生日(9月23日)を大々的に宣伝したのは、メーカーの大都技研である。  この大都技研のツイート自体は、エミリアの誕生日が9月23日であるという事を伝え、それまでに企業アカウントをフォローし、リツイートすれがオリジナルQUOカードを抽選でプレゼントするというものであるが、このエミリア誕生日情報は瞬く間に拡散され、当日は、該当機種の出玉を期待しパチンコ店に行った人たちも少なくない。  この、キャラクターの誕生日問題。  客側が勝手に盛り上がり、店側もその盛り上がりを察知し、それ相応の対応をする。これ自体は何も悪くないし、パチンコ店としてそれくらいの「遊び」があっても良いと思う。  問題は、パチンコ店側がキャラの誕生日云々で客を煽ること。それで出玉還元でもすれば救いはあるが、「あんたらが勝手に盛り上がっただけ」と突然ハシゴを外すかのように、出玉ではまったく還元しないとなれば、これはもう「悪」以外の何物でも無い。 「アイランド秋葉原店」が、あそこまでの店になったのには、長い間、遊技客との信頼関係を築いてきた過程があるはずだ。その過程をすっとばして、グレーな手法で安易に集客を図ろうとする店に、来年の「誕生日」はあるのだろうか。 <文/安達夕>
Twitter:@yuu_adachi
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