『鉄血のオルフェンズ』の台詞を模して大学職員に抗議
――9月に入ってから、処分を検討している旨の文書が大学から送られてきました。文書には、Nさんがアニメの台詞を使って、大学の職員に抗議したことが詳細に記されています。
Nさん:まず初めに言っておくと、この文書に載っている僕の発言は周りにたくさんいた受験生を意識して言ったものでした。京大の職員だけだったらさすがにこんな言い方はしませんよ。
「
何やってんだよ団長」というのは、団員をかばって銃弾に射抜かれて死んでいくオルガ団長を見て団員が言ったセリフです。このオルガ散華のシーンは有名なので、これも知名度が高いと思います。
「
これがギャラルホルンのやり方か」について言えば、ギャラルホルンというのは『オルフェンズ』の世界を統括している警察組織で、オルガが団長を務める鉄華団と敵対しています。僕はオルガの側だったので、止めようとした京大職員を指してギャラルホルンと呼びました。
「
セブンスターズは良いのになんでオルガはダメなんだよ」という発言のなかに出てくるセブンスターズは、七人の名門貴族のメンバーからなるギャラルホルンの最高決定機関です。「折田先生像」は二十年近く続く伝統となっているので、僕の建てたぽっと出のオルガ像と比べればよっぽど権力を持っています。この対比を『オルフェンズ』の設定に引っ掛けてこういう表現をしたんだと思います。
「
希望の~はな~、繋いだ~絆~が」というのは『オルフェンズ』第二期の後期エンディングテーマ「フリージア」の一部です。例のオルガ散華のシーンで、「止まるんじゃねぇぞ……」という台詞が出てくるところでちょうどこの部分が流れたので、それで有名になりました。文書の最後にある「『俺達は止まれねーからよ』と発言し、音楽を流した」というのもこのシーンを意識しています。
受験生の中には「あれで元気づけられました」という人も
――文書には、「受験生の邪魔になるため静かにするよう職員が通告するも無視し」とありますが、Nさんの行動は受験生に迷惑がかかるようなものだったのでしょうか。試験を受けている受験生への配慮という点については考えていたのでしょうか。
Nさん:もちろん試験を受けている受験生への配慮についてはちゃんと意識していました。僕と職員とのやり取りがあったのはどれも試験会場からはかなり離れたところでした。文書には「大声で発言」「大声で歌った」と記録されていますが、僕は大声なんて出していません。本当に大声で叫べば試験会場まで声が届いてしまったかもしれませんが、それほどの声は出していません。そもそもどこからが「大声」なのかが分かりませんし、恣意的に誇張された表現だと思います。通行していた受験生から注目されたという程度です。
受験生からの反応について言えば、みんな面白がって笑ってくれていたし、好意的な反応ばかりでしたよ。写真を撮っていいですかと聞いてくる人も結構いたし、中には「止まるんじゃねぇぞ……」のポーズで像と記念撮影をしたような人もいました。この年の入試に合格して入学してきた学生に「入試の日、オルガ像見ましたよ。あれで元気づけられました」と言ってもらったこともあります。先ほどお話ししたように僕自身も入試当日に折田像などの展示を見て勇気づけられ、こういう面白い大学に行きたいという思いで試験を頑張れたので、次は自分が逆の役割を果たせたんだなと思えてこの時は嬉しかったですね。
――Nさんはどういった動機でこうした活動をやってこられたのですか。
Nさん:まずは自分で作った創作物をほかの人に楽しんでもらいたかったということがありますね。しかし何よりも
京大の自由をこうした表現によって継承し、守っていきたかったんですよ。ただ伝統に囚われすぎるのはよくないとも思っていて、タテカンを建てるにしてもただ建てるだけではなく、衆院選にあわせるなどして自分なりのアレンジを入れました。オルガ像もそうですが、伝統を踏襲しつつもそこからの差異化を図るような活動を目指してきました。
――今回、懲戒処分を検討していると大学から通告が来た件についてどう考えていますか。
Nさん:郵送されてきた文書を最初に見たときは本当に驚きました。こんなことで処分されてしまうのかと。この程度で処分されてしまうのなら入試の日に折田像やタテカンを展示する文化はなくなってしまい、この手の活動はもうできなくなってしまいます。
職員に少しでも「口答え」すると処分されてしまうなんて、どう考えてもおかしい。ずっと勉強してきた努力が実って今年9月の院試にも合格できて、あとは卒論を書いて卒業するだけだったのに、これで停学処分にされて単位が取れず、大学院に進めないという最悪の事態になる可能性もある。そんなことになってしまったら本当に悔しいです。
そもそも、
折田像は京大入試の風物詩として黙認されているのに、オルガ像だとどうしてダメなのでしょうか。京大の入試当日には折田像のほかにもタテカンをはじめとして学生が企画したさまざまな創作物が設置されています。その中でオルガ像だけが悪いということはできないと思います。僕の行為・言動を記録した文書を見てみても、最初にオルガ像を大学構内に建てようとしたこと自体が悪いとは書かれていません。処分を検討する理由とされている僕と大学職員とのやり取りは、大学職員がそれを問題視してきたことで初めて持ち上がってきたものです。そのやり取りをさらに問題視して処分を検討する理由と見なすのは、
自分たちがダメだと決めたことはとにかくダメなのであって、それに抗議することすらダメなのだと言っているようなものです。
大学当局はもっ
と学生の自由な活動を認め、そこに何か問題があったとされた場合でも、自らの決定を一方的に押し付けるのではなく学生と対話するようにしていってほしいです。そうでなければ
大学は自由に発言し行動することが許されない独裁国家のような場所になってしまうでしょう。今月の9日に聴き取り調査があり、そこで懲戒処分の詳細が決まります。この場では向こうの主張を聞いたうえで自分の思いや正しい事実関係を伝え、あまりにも筋が通らないなと思うところがあれば自分の意見をしっかり主張していきたいと思っています。