日本にいるだけではわからない、「日米の価値観に縛られた日本人」……海外移住者の本音<南米編>
母国を離れ、海外に住む海外在留邦人数は年々増え続け、現在は135万人以上に上る。いったい彼らはなぜ海外に移住するのか? 第3回目となる今回は、南米への移住者にその理由を聞いた。
日本のエンタメカルチャーに閉塞感を感じて、視野を広げたくなった……。文化的な理由でブラジルに移住したのは当サイトにも寄稿するジャーナリストの沢田太陽氏だ。
現在、49歳の沢田氏は移住してから9年が経つ。それまでジャーナリストとして順調にキャリアを積み重ねてきた沢田氏だが、自分が日本でやれることの限界も見えてきたという。
「20代は企業でラジオ番組の制作を担当し、30代からはフリーの音楽ジャーナリストになりました。30代後半にインディペンデントで音楽メディアを立ち上げ、フリーペーパーから雑誌にまで育てたんです。そこで『自分のしたいことをやりきった』感じがありました」
同じ頃、日本社会では少子化や内向き傾向が強くなり始め、こういった状況に強い不安を感じるようになった。
「欧米基準から見たロックフェスのラインナップや、映画やアメドラの日本上陸が遅いことを、時に嫌われ役になるまで追及し続けて、かなりストレスを感じていました。日本での理解の少なさと自身のメディアを経営するプレッシャーで精神的に苦しかったです」
今でこそ日本のエンタメ業界のガラパゴス化はメディアも指摘するところだが、当時は四面楚歌の状態。旬なアーティストを招聘していたフェスのラインアップにはいつの間にか代わり映えしない面子が並ぶようになり、ストリーミングサービスの上陸が遅れたことで、人気の海外ドラマにも大きなタイムラグが発生していた。
そんななか、自身のキャリアプランや表現の仕方に思い悩んでいた沢田氏は、米国系ブラジル人の妻に「一緒にブラジルで暮らさないか」と言われ、背中を押されたという。
「それまでは無意識のうちに、『日本に生まれて、日本で一生を終える』と考えていたんです。移住の勧めを受けて、『別に日本人だからって、日本で一生を終えることに固執しないでいいんだ』と気が楽になりました」
こうして沢田氏は自分の人生のチャプターを一度締めくくろうと決意した。また、移住にあたっては家族との人生設計もあったという。
「妻は子供をほしがったのですが、日本で子育てにかかるコストや教育環境、とりわけ、ハーフの子を日本で育てるリスクを懸念しました。『混血であることが普通』であるサンパウロのほうが、『受けるべきではない心の傷』をより回避できるのではないか、という結論に達したんです」
‘10年に移住した沢田氏、現在は妻と7歳の息子、3歳の娘と暮らしている。収入は半分以下になったものの、運よくブラジルニュースの翻訳業にも就くことができた。
ガラパゴス化するエンタメ文化に辟易
ハーフの子を日本で育てるリスク
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