日本にいるだけではわからない、「日米の価値観に縛られた日本人」……海外移住者の本音<南米編>

エンタメにも日本とアメリカ以外の価値観を発見

サンパウロの町並み

サンパウロには日本人コミュニティも多くあるが、古くからの移民は完全にブラジルに同化しているそう

 それまでも職業柄、海外カルチャーに触れてきた沢田氏だが、ブラジル・サンパウロに移住してからは、その視点にも大きな変化があったという。 「今振り返ると、『海の外には敏感』と思っていた自分でさえ、日本にいたときは日本とアメリカの価値観にとらわれていた気がします。そこにブラジルという視点が加わったことで、仕事でずっと触れてきたエンタメはもちろん、世界をより広い視野で見られるようになりました。南米の政治や文化、歴史、さらにサッカーにも詳しくなったことで、ジャーナリストとしても成長できたと思います」  ブラジルといえば日系人が多い印象があるが、そうしたイメージも実際に現地で目にすると違いがあるようだ。 「サンパウロには南米一の日本人コミュニティがありますが、古くからの移民は完全にブラジルに同化していて、いわゆる比較的近年にブラジルにやってきた人は、どうしてもプログラムを利用してやってきた若者か、大企業の駐在社員に限られます」

日本は国際的な常識が通じない

 また、ブラジルに移住してからは、それまでも疑問を抱いていた日本社会を見る目がより厳しさを増したという。 「国際的な常識が余りにも通じないことが多く、セクシズムやLGBTの意識に関しても後進的です。エンタメ業界で言えば、サブスクリプションでの音楽視聴への誤解と大幅な遅れにも驚かされます。政治に関しても、ブラジルのようにデモが当たり前の国に来ると、『なんでメディアや国民はもっと与党に声を上げないのだろう』と不思議に思いますね」  そう語る沢田氏。ブラジルでの生活には満足しているそうだが、今後、日本に移住する予定は? 「ボウソナロ政権が今以上の独裁政治になれば考えますが、その際も子供の教育環境との天秤にかけることになると思います」  日本の文化を世界基準にアップデートしたい……。そんな思いで地球の裏側から本音を発信し続ける沢田氏。最後に海外移住を考える人へのメッセージをもらった。 「移住してから9年経ちますが、特に困ることはありません。『日本的なやり方』にこだわらず、『郷に入れば郷に従う』ことができる人ほどやっていけると思います。特に若い方で、日本での生活に違和感を感じ、日本以外の文化に興味があるような人は積極的にトライすることをお勧めしたいです。結果がどうであれ、人生にとっての貴重な経験値にはなるはずなので。ただ、定住となると法的な対策をしっかりしたほうがいいですよ」 <取材・文/HBO編集部>
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