豪邸の玄関だけで暮らしていた男<競売事例から見える世界40>

豪邸イメージ

※写真はイメージです smokedsalmon / PIXTA(ピクスタ)

意外にも多い「豪邸」への差し押さえ執行

 ゴミ屋敷や事故物件、廃屋に近い物件などが連想されがちな、差し押さえ・不動産執行の現場だが、街中を見渡してみれば小綺麗な建売住宅が溢れているように、実際には何の変哲もない“普通の家”への執行が最も多い。  次いで多いかもしれないのが、「豪邸」への執行だ。  地主として代々家系に引き継がれてきた立派な旧家、一代あるいは親子三代以内で財を築いた事業主の邸宅、成功者が両親のために建てたお屋敷、過去には大所帯で賑わっていた農家住宅。  このように広大な敷地と多くの部屋を有し、人々から羨望の眼差しを向けられるような不動産の多くが、最終的にどうなってしまうのかと言えば、生活するうえで必要な最小限範囲以外、全く使われなくなってしまう――。

炎天下での執行作業は過酷を極める

 「酷暑」  そんな単語が連日お目見えすることになった昨今の夏。  屋外が主な作業場となる業界では、ファンの付いた空調服が流行するほどに過酷といえる暑さが当たり前のようにズルズルと続いている。このような暑さともなると、差し押さえ・不動産執行の現場に及ぶ影響もまた少なくない。  炎天下での屋外調査、サウナのように高温となった屋根裏部屋での作業、これらをスーツ姿のまま行わなければならないという暑さによるものはもちろん、害虫や小動物の大量発生。  また、冒頭では「多くない」としたゴミ屋敷や事故物件だが、もちろん少なくもない。    このようなゴミ屋敷や事故物件、ペットネグレスト宅、糞尿が放置される家、下水処理に問題を抱えた土地建物などで出会う臭気もまた“過酷さ”の大きな要因となる。  少々話題が逸れてしまったため、「酷暑」暑さにテーマを戻す。  今回の債務者宅はこの酷暑の最中、既に電気が止められており、大柄な男性が玄関先でパタパタとうちわを仰ぎながら応対してくれた。
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 「家の中、入ってびっくりしないでくださいね」
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