N国市議「居住実態ほぼナシ」判決から2週間。今度はスラップ訴訟か否かを巡って延長戦か

9月24日、N国・久保田市議が起こした賠償請求訴訟の判決内容を報告した選挙ウォッチャーのちだい氏(写真中央)。会見では、久保田氏の居住実態をはっきりさせるべく、立川市民による住民監査請求の必要性も訴えた

NHKから国民を守る党の立川市議の「敗訴」

 NHKをぶっ壊してほしい――100万人の有権者は夏の参院選で「期待」を込めてN国に投票したことだろう。だが、その「期待」を裏切るような騒動が相次いでいる。  今年の統一地方選では兵庫県議選、兵庫・播磨町議選で居住実態がないのに立候補したN国候補者の得票が無効となり、5月の東京・足立区議選でも墨田区在住で立花孝志代表の交際相手として知られる女性の得票も無効に。9月3日には4月の東京・新宿区議選で当選した松田美樹区議についても居住実態が認められなかったとして、区の選挙管理委員会が当選無効を決定した。このほか、元N国所属の二瓶文隆・江東区議に対する脅迫の疑いで、立花代表が取り調べを受けている。直近では、9月19日にアップした動画で立花代表が「アホみたいに子供を産む民族はとりあえず虐殺しよう」と発言していたことも、大きな批判を浴びている。  こうした騒動について、立花代表をはじめとしたN国関係者は逐一、反論動画をアップしてきた。が、なぜか急に動画で触れなくなってしまった騒動もある。N国所属市議が起こした賠償請求訴訟だ。  その裁判の原告は久保田学・立川市議。被告は選挙ウォッチャーとして知られるライターのちだい氏だった。  ちだい氏が「立川市議選には、居住実態のほとんどない元AV男優のニコ生主が立候補しています」と、久保田氏に関する記事を執筆したことが名誉棄損に当たるとして、久保田氏が2018年11月に提訴。ちだい氏が2019年6月に反訴した結果、その主張がほぼ全面的に認められ、9月13日に千葉地裁松戸支部が久保田氏に対して78万5600円の賠償を命じたのだ。  つまり、200万円の賠償を求めた原告が約78万円もの大金を支払うことなったというわけだ。裁判の経緯は以下のような感じだった。

「インターネットコメディアン」自称の市議自ら動画で居住実態を否定?

 提訴に当たって、原告の久保田氏が自身の職業を「インターネットコメディアン」と名乗っていたのは伏線だったのかもしれない。「居住実態のほとんどない」という記述が事実と反すると主張しながら、自身が配信する動画で居住実態がほぼないことを匂わせていたからだ。ちだい氏が話す。 「公職選挙法では地方選告示日の前日の3か月前から居住実態がなければ被選挙権はないと規定されています。立川市議選は2018年6月10日に告示されたので、3月9日以降の居住実態がなければいけなかったんです。ところが、久保田氏は立川市に住民票を移しておきながら、江戸川区平井に自宅があることを生配信で匂わせていました。順を追って話すと、3月8、9日と恋人と沖縄旅行に出かけ、10日には平井の家から配信していました。その10日の放送ではオープニングから『よーし、やっと帰ってきましたよ、我が家にね』と告白している。その後も11日は平井の自宅、12日には平井周辺から動画を配信。さらに14日の放送で興味深いことを明かしていました。住民票を置いていた立川市の自宅を『追い出された』と話していたのです。結局、立川市内のレオパレスの物件に引っ越したのですが、それは3月16日のこと。そのほかにも『平井に洗濯のために帰ってきた』といった発言の数々を証拠資料として用意していたのですが……すべての証拠を提出する前に、久保田氏側が裁判の継続を半ば放棄してしまいました」    久保田氏は当初こそ、立川市の住民票を提出して争う姿勢を見せたが、自らの発言の一部が証拠として提出されると、動画を削除するよう工作。ちだい氏側の提出資料を「確認しない」と陳述する一幕もあったという。  形勢不利と見たのか、今年5月10日にはちだい氏に対する賠償請求を放棄すると記した書面を提出している。にもかかわらず、ちだい氏が反訴すると一転して、放棄を放棄……。相手側が提出した証拠は見ない、裁判は取りやめるとしながら、それを翻す奇策で裁判を混乱させたのだ。  もう一人、今回の裁判のキーマンになった人物がいる。立花代表だ。今回の裁判で、久保田氏は弁護士を立てずに本人訴訟を貫いた。その久保田氏を全面的にサポートしたのが立花代表。訴状や陳述書なども用意したと、本人が動画等でたびたび明かしている。裁判所では傍聴席から久保田氏に資料を手渡す場面も見られたという。この「法律のプロ」(立花代表談)が、5月12日に久保田氏が配信した動画上で、今回の裁判を「スラップ訴訟」と明言していたのだ。 <この裁判はそもそも勝って、ちだい君からお金をもらいに行くためにやった裁判ではなくて、いわゆるスラップ訴訟。スラップっていうのは、裁判をして相手に経済的ダメージを与えるための裁判のことをスラップ訴訟っていうんですよ。(中略)弁護士費用は勝っても負けても当事者が払えということになっている。だから横山君(※編集部注:久保田氏のこと)が裁判負けても、ちだい君が依頼をした、あの2人の弁護士費用はちだい君が払わないといけない>  裁判に深くかかわった立花代表の発言が、裁判官の心象を悪化させたことは明らかだ。判決文には「(久保田氏の)訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認めざるをえない」と記されている。「訴訟制度の乱用」(ちだい氏の弁護人を務めた馬奈木厳太郎弁護士)と認めた格好だ。  立花氏の予想に反して、ちだい氏の弁護士費用も支払うよう命じられたことは、久保田・立花両氏にとって想定外だったことだろう。だが、興味深いのは、むしろ今後だ。
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過去にはスラップ訴訟と発言も、「スラップか否か」について控訴で争う
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