環境省は、日本スポーツ協会の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)の資料を引用し、「運動に関する指針」としてこんな勧告をしている。
気温が31~35度の場合、熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避け、10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行い、暑さに弱い人(※体力の低い人、肥満の人や暑さに慣れていない人など)は運動を軽減または中止したほうがいい、と。
環境省 熱中症予防情報サイトより
なお、同資料では、気温35度以上の場合について、「特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合には中止すべき」と明記している。
平和の祭典であるはずの五輪で、組織委が選手や観客に酷暑の下の運動を強いるようでは、日本は世界中から激しい非難を浴びることになる。
選手にもボランティアにも未成年が含まれることから、熱中症のリスクを政府として認めているのにこのまま五輪開催を強行するなら、これは東京都と日本政府による児童虐待そのものだ。
では、五輪期間中の酷暑ぶりを検証してみよう。
今年の東京都心の最高気温の平均は、約33.2℃だった(※五輪の開催期間である7月22日~8月9日の19日間の平均)。開催期間のほとんどが、環境省が熱中症の予防として注意を呼びかける「厳重警戒」と「運動は原則中止」のレベルの酷暑だ。
気温は日本気象協会のサイト「tenki.jp」から引用
今年7月3日に組織委の主催で開催された第4回ボランティア検討委員会では、「大会時のボランティア活動の環境について、暑さ対策は基本的には自己管理」との説明がされた。
また、
日刊ゲンダイの取材に対して、組織委は以下のように答えた。
「暑さ対策は、事前対策と自己管理が大切であると認識しています。研修で周知徹底を行うとともに、活動時には対策グッズを配布、休憩時間を十分に取れるシフトを検討しています。仮に活動中に熱中症になってしまった場合には、保険(組織委負担)の対象となり得ます」
組織委は、「全ての大会ボランティアの方に、ボランティア活動中を対象とした保険を東京2020組織委員会で手配します(個人負担はありません)」と公式サイトに書いている。だが、今年9月25日時点でも、「皆さまが安全に活動していただけるような最適な保険を現在検討中」だ。
確定的なことは、なかなか言わない。それが組織委の基本姿勢である。
昨年末には、東京都教育委員会が都市ボランティアを集めるため、10万枚の応募用紙を都立高校に配布し、半ば強制的に生徒たちに応募を強いた疑いが出てきたと、テレビ朝日の「モーニングショー」で報じられた。
こうした熱中症対策や「強制」問題についての質問は、9月18日に上田令子・都議が都議会本会議に提出済みで、追って同議員のブログで都からの回答が明らかにされる予定だ。