離婚案件の多くに不貞がある。離婚実務の経験上、多くの事例について、「女からの離婚案件に(夫の)モラあり」「男からの離婚案件の影に女あり」といえる。
以下、不貞の進行の典型例を説明する。
1、不貞の可能性のある対象が現れると、モラ夫は、清潔に気を使い始める。
デートが始まると、モラ夫は機嫌がよくなり、妻へのモラハラも少し和らぐことが多い。この頃から、スマホを肌身離さず持ち、電話がかかってくると、ベランダに出たりする。
2、不貞相手とより親しくなると、突然の「残業」「接待」が入る。
遅くなるとの連絡がなく、心配になった妻が電話しても、携帯の電源が切られていたりする。そして、飲み会や接待のはずなのに酔いが浅かったりする。金遣いが荒くなり、妻への生活費の切り詰めの要求が強まる。
3、男女関係になると、朝帰りが始まる。モラ夫は有頂天になり、自宅にいるときも幸福感に溢れ、モラハラが影を潜めたりという事例もある。
家事や育児の分担を始めるモラ夫までいる。不貞を妻に邪魔されたくないため、妻の機嫌をとっておくのであろう。妻としては、モラ夫の変化が嬉しくて、疑いの目を向けることに躊躇う。つまり、モラ夫の思惑にはまってしまう。
4、この時期は、夫婦間の性交渉においても、以前よりも丁寧で、自己中心的でなかったりする。
むしろ妻との性交渉の回数が増えることもあるが、女性には、この心理の理解が困難なため、疑いを持つ機会を失ったりする。この段階では、多くのモラ夫は、妻に優しくなる。不貞を妻に邪魔されたくないため、妻の機嫌をとっておくのであろう。
5、さらに関係が深まると、休日なのに突然、「上司」から呼び出しがかかったり、重要な「顧客」のクレームが入って、出かけなければならなくなる。
6、不貞相手との関係が更に深まると、宿泊付き出張が入ったりする。
モラ夫は、不貞相手に対しては、通常、妻をディスり、至らない妻と結婚した自らの不幸を嘆き、妻との離婚、不貞相手との結婚を考え始める。不貞相手からネクタイや洋服などを貰い、洋服の趣味が変わることもある。
7、この時期、妻を「邪魔」と思い始め、モラハラの程度が段々と酷くなったり、手が出たりすることもある。
前回の連載記事では、「離婚するぞ」と怒鳴るのは、単に妻を脅しているだけであると書いた。不貞相手がいる場合は、モラ夫は、離婚だ!と怒鳴らず(脅さず)、妻に対し「頼むから別れてくれ」とお願いしたり、「俺、お前と離婚するから」と冷静に宣言したりする。
後日、真実を知った妻の多くは、裏切りの事実を突き付けられ、生活費の切り詰めを強要された真の理由を知り、夫に激しい憎悪を抱く。