不合理極まりない軽減税率。大企業優遇の不公平な税制が加速する<早川忠孝氏>

消費税増税は日本経済に大打撃を与える

 いよいよ10月から消費税が引き上げられることになる。  消費税は、1989年4月1日に3%で導入され、1997年に5%に、2014年に8%に引き上げられてきた。導入当時、「直間比率の是正が必要」「税金は薄く広く負担すべき」といった議論が展開された。  だが、もともと消費税は格差拡大型の税制だ。所得が少ない人ほど、所得に占める消費税の割合は上がるからだ。そして、消費増税は法人税引き下げによる税収減を補うために、推進されてきたのだ。  このまま庶民の所得を大企業に奪われるような税制を放置すれば、消費はさらに冷え込み、五輪特需の反動で日本経済は奈落の底に叩き落されるだろう。  『月刊日本 10月号』では、「消費税のカラクリ あなたの所得が大企業に奪われる」として、消費税に関する特集記事を組んでいる。  同特集の中から、元衆議院議員であり弁護士である早川忠孝氏の軽減税率に関する論考を紹介しよう。

不合理極まりない新聞への軽減税率適用

── 消費増税に伴って軽減税率が導入され、10%と8%の2種類の税率が混在することになります。例えば、酒類に分類されるみりんは10%になり、アルコール度数が低いみりん風調味料は8%。また、ファストフード店でハンバーガーとドリンクのセット商品を購入し、ハンバーガーは店で食べて、ドリンクだけ持ち帰った場合には、軽減税率が適用されません。消費者は混乱します。 早川忠孝氏(以下、早川): 軽減税率の導入は何の合理性もない愚策です。複雑な税制を導入して喜ぶのは、IT事業関連業者や税理・会計業務に関わっている人たちだけでしょう。私は軽減税率が何とか撤回されることを期待していましたが、最終的に導入されることになってしまいました。 ── 8月24日付の主要全国紙・地方紙には「今、軽減税率対応のレジを導入すればレジ・システム補助金が使えます」という全面広告が一斉に掲載されました。経済産業省、中小企業庁の連名広告です。7~8月だけで、企業向け消費税対策広告に15億円もの税金が使われました。 早川:合理性のない軽減税率導入のために、余計なコストが発生したことは否定できません。ただ、決まったことですから、少しでも混乱を避けるために知恵を絞り、順応していくしかありません。 ── なぜ混乱を招く軽減税率を導入することになったのですか。 早川:軽減税率は、庶民の味方というイメージをアピールしたい公明党が、かなり早い時期に言い出したものです。自民党は、消費増税に対する公明党の支持を得るために、公明党に配慮する形で軽減税率導入に踏み切ったということです。公明党としては、「公明党には政治を変える力がある」ということを支持者にアピールすることができました。  新聞への軽減税率適用も不合理極まりないことです。これもまた公明党への配慮と同じ構造です。政権は新聞の消費増税反対論を封じ込めるためには、新聞に軽減税率を適用する必要があると判断したのでしょう。軽減税率を適用してもらった新聞は、政権を批判しにくくなったと指摘されています。政権に対する新聞の忖度を強めた可能性はあります。 ── 消費増税に伴い「ポイント還元策」も導入され、キャッシュレス決済の場合には5%または2%のポイントが還元されます。中小企業や個人が経営する小売、飲食などは5%還元で、コンビニなどのフランチャイズチェーンは2%です。同じ食品を買っても、キャッシュレスで買うか現金で買うか、またどこで買うか、さらに店内で食べるか待ち帰るかによって、10%、8%、6%、5%、3%の5段階の複数税率が併存することになります。 早川:ポイント還元は、キャッシュレス決済を普及させたい財務省の意向に沿ったものだと思います。財務省は、マイナンバーの導入と合わせ、電子マネーの普及によって資産の隠匿や脱税が容易に出来ないようにしたいと考えているのです。
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痛む庶民の懐。一方で納税を逃れる大企業
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月刊日本2019年10月号

国益を損なう「嫌韓」ナショナリズム
消費増税のカラクリあなたの所得が大企業に奪われる
酷暑・放射能東京五輪が危ない!
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新連載2回目 ルポ 外国人労働者

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