不合理極まりない軽減税率。大企業優遇の不公平な税制が加速する<早川忠孝氏>

納税を逃れる大企業

── 消費増税自体についてはどう考えていますか。 早川:私は消費税引き上げ、法人税引き下げというこれまでの税制の流れについて、それほど大きな疑問を抱くことはありませんでした。  しかし、今回の参院選でれいわ新選組の山本太郎氏が消費税廃止を掲げ、税の問題について正面から問題提起しました。これまでは消費税に対する厳しい批判は与党からも野党からも出ませんでした。そもそも今回の消費増税は民主党の野田佳彦政権時代の2012年に決められたものです。そのため、民主党の流れをくむ野党からは、なかなか消費税に対する批判が出てきませんでした。  そうした中で、山本氏は消費税が庶民の生活を圧迫していると明確に述べました。そして、大企業が税金を払っていないと指摘し、富の集中が進んでいることを厳しく批判しました。こうした議論を聞いて、私自身も反省するところがありました。当然のように、安定的な税収を確保するためには、消費増税は避けられないだろうと考えてきました。また、間接税の方が公平だと信じていました。また、法人税を下げないと、日本企業が海外の企業との競争に敗けてしまうという強迫観念を持っていました。しかし、改めて税制について考え直し、認識が変わりつつあります。大企業に有利な税制を進め過ぎたのではないか、経済界の要望を受け入れ過ぎたのではないかと。  我々は、企業優遇税制と言われる租税特別措置による政策減税を進めてきましたが、その結果抜け穴が大きくなり過ぎて、大企業が納税しないで済む状況をもたらしてしまった。また、輸出業者には消費税が還付される「消費税還付制度」があります。  利益を上げている大企業はきちんと税を負担すべきだと思います。GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)に代表される巨大IT企業に対しても、その税逃れを許してはいけないという国際的な世論が高まっています。G20も、巨大IT企業の課税逃れを防ぐ国際的な「デジタル課税」の統一ルール取りまとめを進めようとしています。  次の衆議院選挙で、野党は消費税5%引き下げを掲げて戦うことになるかもしれません。税の在り方が本格的な議論になるでしょう。これまでの税制が本当に公平だったのか、改めて議論をすべきときだと思います。 (聞き手・構成 坪内隆彦) <記事提供元/月刊日本> 早川忠孝●自民党所属の前衆議院議員、現弁護士。司法、行政、立法が連動し、協働する社会を目指して読者参加型のブログ『弁護士早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」』を毎日更新中
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
1
2


月刊日本2019年10月号

国益を損なう「嫌韓」ナショナリズム
消費増税のカラクリあなたの所得が大企業に奪われる
酷暑・放射能東京五輪が危ない!
トランプに押し付けられたカジノ
評論【内閣人事】
新連載2回目 ルポ 外国人労働者

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会