駐輪場もシェアの時代へ。空きスペースを駐輪場にして不正駐輪を減らす取り組み

不正駐輪が起きるわけ シェア駐輪場は意味を成しているのか

 事業を拡大するにつれて、みんちゅうは行政や企業と連携を進めてきた。2018年には、神奈川県藤沢市、大和市、東京都台東区、埼玉県さいたま市などと提携した。行政と関わるに連れて、「駅前の不正駐輪は、自治体に共通の悩みでは」と中野さんは気が付いた。  不正駐輪は、外観を悪くし、歩道を狭め怪我の要因になるなど、地方自治体に大きな悪影響を及ぼす。点字ブロックが塞がれるケースもあり、お年寄りや視覚不自由者が転ぶケースまであるとのこと。不正駐輪が増えるほど、その分苦しむ人が多くなる。

撮影:板垣聡旨

 社会的ジレンマといった心理学の用語がある。社会の成員は、社会全体の利益追求に対して、協力的行動か非協力的行動を選ぶことができる。非協力を選択した場合には、社会全体よりも個人が大きな利益を獲得することができるが、その分、社会は不利益を被る。  不正駐輪も同様に考えられる。不正駐輪をすると、駐輪した当事者は「利便性の高いところにお金を払わずに済む」という利益を受けられる一方、歩行者に怪我をさせる危険性が生じたり、街の景観を破壊したりするなど、社会に不利益を与えてしまう。  不正駐輪の研究は、都市社会学や社会心理学の分野で活発に行われている。不正駐輪問題の解消方法は、駐輪台数の増設といった構造的策略と、啓蒙ポスターを貼るといった心理的策略の2種類に分類されている。ポスターに描かれている内容によって効果が異なることがあるため、心理的策略には限界がある。  構造的策略を行えばいいのではという考えに至るが、金銭的な問題が壁として立ちふさがる。駐輪場を設置するには、数千万円単位のお金が発生するからだ。精算機や駐輪ゲートを一台置くだけでも100万円は軽く超え、その上人件費もかかる。気軽に行政が出せる金額ではない。  みんちゅうは専用のテープを地面に貼ることで区画を作り、看板を置くだけ。そこからの運用コストは、時たまみんちゅうの営業担当が様子を見に来るためゼロだ。

みんちゅうを使っている人に直撃 現場の人はどう感じているのか

 実際に使っている人に聞いてみた。場所は明大前。この日は偶然にも、京王不動産が所有する明大前地下駐輪場が工事されており、みんちゅうが使用できない駐輪場の穴埋めをしていた。

撮影:板垣聡旨

 夕方17時になると、続々と人が帰路につきはじめ、明大前の改札は人混みであふれた。改札から出て歩いて2分のところに、みんちゅうの駐輪場はあった。収容台数はざっと40台。  世田谷区在住40代パート勤務の女性は、「今日が初めて、近いから良い。だけど、場所によって金額高いよね」と話す。みんちゅうはオーナーの裁量で場所代を設定できるため、高額な駐輪代もチラホラ。  工事関係者の50代の男性は話す。「営業担当の人がちょこちょこ様子を見に来るね。専用のデバイスを使い、きちんと使われているのかをチェックしている。でも不正駐輪はあるらしいね。登録せずに止めているみたい。何台の不正駐輪があったかと聞くけど、少ないんじゃない?」。

撮影:板垣聡旨

 現場の声は必ずしも肯定的なものではなかったが、ここまで来ると不正があるのは仕方がないものであり、不正の数は少ない。  社会学者のオルソンが指摘したフリーライダー問題というものがある。近代市民社会の発達において、「経済的や時間的なコストを払わずに、既存の社会システムの恩恵を受けるフリーライダーが出てくる」といったものだ。そう、不正駐輪をする自転車乗りはフリーライダーなのだ。  いずれにせよ、みんちゅうサービス注目度は高く、効果がかなりあると言える。今後のみんちゅうのサービス拡大に目が離せない。
ジャーナリスト。ミレニアル世代の社会問題に興味がある。ネットメディアを中心に、記事の寄稿・取材協力を行っている。
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