また、外国人ならではの悩みもあるようだ。同じくアメリカ人のPさん(男性・37歳)は次のように語る。
「日本人であれば苗字なんてせいぜい3文字程度じゃないですか。
欧米人はカタカナに直しても文字数が多いから、収まらないんですよ。そもそもそこらへんで売っていないから、いちいち特注ではんこを作らなきゃいけなくて大変なんです。しかも、わざわざ作って持っていったのに、今度は大きさが違うとか言われて、また作り直して……。いい加減にしろよと思いますね」
「決まりだから……」というのはお決まりのセリフだが、その決まりを変えるのが仕事である大臣がこの体たらくでは、文句を言われても仕方ないだろう。
仕事で日本と海外を行き来しているHさん(イギリス人・男性・53歳)は、はんこ文化は日本経済の足手まといになっていると指摘する。
「会社にもはんこが必要、さらにそのなかの従業員のはんこも必要……。といったように、はんこ文化にはキリがありません。そんなことをやっていると時間もかかるし、手続きを任せるとなると余計にカネもかかる。海外資本が遠のいてしまう原因にもなると思います。
多くの人が薄々無意味だと気づいているし、論理的には必要性が説明できないけど、文化だなんだといって結局続いてしまう。でも実際は既得権益を守ろうとしているだけ。
今の日本を象徴するという意味では、たしかにはんこは文化的かもしれませんが……」
今回の人事や大臣の発言を見ても、はんこと紙の書類がデジタル化する日はまだまだ遠そう。この改造内閣は、こんな実務にも関わることは変えようという気持ちすらないくせに、無意味かつ有害な「憲法改正」を進めようというのだから困ったものである。
<取材・文/林 泰人>