アリペイとの連携で集客増も。キャッシュレス決済と連携して存在感を増す地域通貨

 地域内で消費促進やボランティアなどの相互扶助を目的に、限定された地域でのみ使える「地域通貨」。かつて’00年代にブームとなったが次第に下火となっていた。しかし近年、地方創生やFinTechを追い風に再び注目を集めている!

negiの由来となった、深谷市特産の深谷ネギ。利根川と荒川に挟まれた肥沃な大地で育ち、全国的にも有名なブランドだ

スマホやICカードを利用した地域通貨が続々と登場!

 今年5月、埼玉県深谷市で1億1000万円分発行された新たな地域通貨が「negi(ネギー)」だ。1negi=1円で、QRコードつきカードかスマホの決済用アプリで購入できる。市内のレストランや居酒屋、家電販売店、洋服店など約200店舗で使える。購入したnegiには、10%のサービスがつく。つまり、1人あたりの購入上限である5万円分を買ったとすると、5000円もお得なのだ。一般的なクレジットカードの還元率0.5~1.0%と比べても、かなりの高還元率。5月11日の販売開始から数日でnegiは完売。滑り出しは上々だ。発行のきっかけを同市の担当者はこう語る。 「ふるさと納税の返礼として、市内で使える『電子感謝券』を発給したことがあるんです。これに対して、市内在住者でも使えるものがほしいとの要望があり、ふるさと納税の総合サイト『ふるさとチョイス』を運営するトラストバンク社と一緒に1年がかりで準備し、negiを始めました」

negiをチャージする専用カード

 深谷市が地域通貨を始めた背景には、少子高齢化による人口減少や、ネット通販の普及による市の経済縮小への危機感がある。「だからこそ、新しいことをやってみようと考えたのです」(同)。

スマホの決済画面。店側のスマホでQRコードを読み込んでもらうと決済できる

【negi(ネギー)埼玉県深谷市】  深谷市が今年5月から実施。9月末までの期間中、スマホなどを使ってQRコードで決済できる。「1negi=1円」で、市内の実験参加店限定で使える仕組み。参加店舗は200~300軒になる見込み。10%のプレミアムポイントが上乗せされ、1000円で1100negi分に交換できる。深谷市外在住者も購入できる。スマホに不慣れな人のため、「negi」をチャージできるプリペイドカードも用意。negiという名前は、深谷市の特産物の深谷ネギにちなんで名づけられた。

導入コストゼロで普及したアクアコイン

アクアコイン

「東京湾アクアラインができて、一時は多くのお金や人が対岸に流出してしまいました。これが地域でお金が回るきっかけになれば」と語るのは、「アクアコイン」運営主体の一つである千葉県木更津市産業振興課の、西原司さん。 「昨年10月のスタート以来、加盟店舗はすべて木更津市内で441店、これまでに約1億2590万円分がチャージされ、1億1900万円が利用されました」(西原さん)  短期間でこれほど加盟店舗を増やすことができたのは、店舗側のメリットもある。 「クレジットカードでは、店側は3~5%の手数料がかかるようですが、アクアコインの場合は基本1.8%、1.5%の場合もあります。また、読み取り機などの端末を用意しなくていいので、導入コストがゼロだということも普及した要因だと思います」(同)

スマホで決済するアクアコインは、君津信用組合の窓口や専用の自動チャージ機、プリペイドカードでチャージできる

【アクアコイン 千葉県木更津市】  君津信用組合・木更津市・木更津商工会議所が 連携して普及に取り組む電子地域通貨。スマホの専用アプリをダウンロード、1円=1アクアコインとしてチャージする。木更津市内の加盟店に設置してあるQRコードを読み取り、キャッシュレスで決済。現在は、チャージごとに3%のポイントがつく。今年度からは、市民活動や市主催のイベント参加者などに行政ポイントが付与されることに。住民票の発行手数料など市のサービスでの利用に向けて、5月から実証実験を開始。  このメリットを最大限に活用したのが、岐阜県飛騨地域で展開している地域通貨「さるぼぼコイン」だ。 「この地域にはもともと、クレジットカードもキャッシュレス文化も浸透していませんでした。それが逆に、爆発的な普及に繋がっていると思います」(さるぼぼコインを発行する飛騨信用組合常勤理事総務部長・古里圭史さん)
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中国のアリペイと提携、外国人観光客の利用も
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