H&M、アマゾン流域の火災を受けてブラジルからの皮革輸入を中止。その背景とは?

Demonstration In Support Of The Amazon In The Hague

. (Photo by Romy Arroyo Fernandez/NurPhoto via Getty Images)

 ファストファッション業界で、ZARAを擁するインディテックスの次に世界規模で売上の多いH&M(Hennes and Mauritz)が皮革のブラジルからの輸入を一時的に中断したことを9月5日に発表した。

アマゾンの火災でH&Mが下した決断

 それは次のようなな理由からである。今年に入って、アマゾン地帯での火災の発生率が8月までに昨年同期と比べ83%の増加で74155件の火災が発生しているのだ。  この森林火災増加の背景には、資源開発や農牧畜にとアマゾン地帯に新たな土地を求めて森林の伐採が加速化されているということがある。牧畜の場合は木を伐採して焼いて牧草地に変えて牛の放牧を増やすという狙いがあるのだ。  そして、今年1月に就任したボルソナロ大統領政権下になってからその開発規模が急激に拡大している。それが火災の発生率の上昇に繋がっているというのが理由だ。(参照:「El Tiempo」)

「カリオカのトランプ」の強欲さが招いた惨事

 ボルソナロ大統領はアマゾン地帯の環境保護よりも自国の産業の発展を優先させるべくアマゾン地帯の開発を促進しているというのが問題なのである。開発業者はボルソナロのこの規制の少ない姿勢を利用して今まで以上に開発のスピードを上げている。  H&Mの広報担当は「アマゾン地帯のブラジル側における深刻な火災とそれが牧畜業の拡大に関係していると見ていることから一時的にブラジルからの皮革の買い付けを中断することを決定した」と述べ、更に「商品に使用される材料(皮革)が同国の環境保護に被害を与えていることがない」と確信するまでこの輸入を行わないとしたのである。(参照:「Diario de Sevilla」)  同社が発表する1週間前にも、「ティンバーランド」「ザ・ノース・フェイス」を傘下にもつVFコーポレーションも同様の決定をしている。(参照:「NY Times」)  因みに、アマゾン地帯はブラジル、コロンビア、ペルー、ベネズエラ、エクアドル、ガイアナ、スリナムを包括し、ブラジルがその60%を占めている。
次のページ
H&Mの決断に垣間見える「ボルソナロへのメッセージ」
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会