H&Mの決断に垣間見える「ボルソナロへのメッセージ」
H&MやVFコーポレーションがブラジルから輸入している皮革がアマゾンにおける牧畜業の拡大に伴う火災と関係していると判断するのは容易ではない。今回のグループ2社による決定は飽くまでボルソナロ政権のこの件に取り組む姿勢を牽制する意味だと思われる。
ブラジルの皮革産業センターによると、昨年のブラジルの皮革の輸出総額は14億4000万ドル(1580億円)で、輸出相手国として米国、中国、イタリアなどである。
H&Mの広報担当は「使用している皮革の僅かの量がブラジルからの輸入で、大半はヨーロッパで調達している」とロイターに述べたという。しかし、ヨーロッパで皮革の供給先のトップはイタリアであるが、イタリアは鞣しの高い技術は持っているが、材料の皮革は外国から調達している。だからH&Mがイタリアから輸入していると思っても、その皮革の原産地はブラジルだったということは十分にあり得ることである。
そのような意味で、今回のH&Mの取った姿勢は飽くまでボルソナロ大統領のアマゾン地帯での環境保護への取り組みにもっと熱心になることを望んでの訴えでしかない。(参照:「
El Pais」)
しかし、今回取ったH&Mの決定は市場での人気を回復させることに役立つ宣伝になることは確かである。特にアパレル市場でインディテックスについで2位にある同社にとって、差別化という意味でインディテックスとは異なったことを積極的に進めて行く必要がある。
現在の同社の経営は嘗ての販売不振から回復途上にある。同社の経理上の今期上半期の売上は5%上昇して102億9100万ユーロ(1兆2350億円)を達成し、株価も13.67%上昇した。経常利益は10.6%減少して5億1000万ユーロ(612億円)となってはいるが、それは現状の市場にアダプトする為の社内の改革を実行している理由からで、長期的には回復に繋がると経営者側では見ている。
現在、店舗の新たな開設を控えて、特に遅れていたオンライン販売の拡大に力を入れている。現在まで48か国でオンライン販売が実施されているのを、今期後半にはタイ、インドネシア、エジプトにもそれを開設する予定になっているそうだ。店舗は世界70か国以上に展開させている。(参照:「
El Economista」)
<文/白石和幸>