渋谷駅前に現れた「ゴーストタウン」――路地の街から「高層ビルの街」へと生まれ変わる桜丘

再開発後は超高層ビル立ち並ぶ街並みに……

「渋谷駅前の再開発」といえば東急グループであるが、桜丘地区の再開発も同じく東急グループが主導しているものだ。1期再開発地区では2018年末に工事が着工されており、現在は多くの建物が解体中。2023年度中の竣工を目指して工事が進められている。  1期地区の敷地は3街区に分けられ、A街区には地上37階、地下4階建ての、B街区には地上32階、地下2階建ての超高層ビルが建設される。館内にはオフィス、共同住宅(マンション)、商業施設のほか、医療施設や災害時帰宅困難者の避難スペースなども設けられる。また、C街区には1期再開発地区内にあったキリスト教会が入居する。それぞれの街区はデッキで接続され、そのデッキの下側には1期再開発地区を南北に貫通する道路「補助第18号線」が整備される。この1期地区の完成後、2期地区(ネクスト渋谷桜丘地区)の再開発が着工される予定となっている。
1期部分の「完成予想図」

開発地に掲げられた1期部分の「完成予想図」。現在の街の姿からは想像できない。

 桜丘地区は東京大空襲の際に大部分が焼け残ったエリアであった。さらに、1960年代に入ると首都高3号線・国道246号線玉川通りの整備によって渋谷駅から横断陸橋(1968年竣工、通称「マンモス歩道橋」)を渡らなければアクセスできないようになり、大部分が大型開発から取り残されることとなった。  そのため、渋谷駅から近いながらも路地と坂で構成された「渋谷」という地名の由来を実感させられるような街並みが多く残っており、そして道に迷いやすいエリアでもあった。  こうした狭い街路は防災面においても不安があり、それゆえ再開発に期待する声は大きい。また、再開発後には桜丘地区と渋谷駅南口がデッキで直結されるため、玉川通りの整備から50年以上に亘った「分断」も解消され、利便性が大きく向上することとなる。地価水準も、他の渋谷駅チカエリアに近い水準となるかも知れない。  2期地区の具体的な開発内容についてはまだ検討段階であるというが、1期地区と同様に元の街区が殆ど残らないような再開発になるとみられ、桜丘は殆どの街区がオフィスと商業施設が主体の超高層ビルが並ぶ、いかにも「都内主要駅の駅前」らしい街並みへと生まれ変わる可能性が高い。
渋谷駅と桜丘を繋ぐ長い歩道橋

渋谷駅と桜丘を繋ぐ長い歩道橋。正面が桜丘町。

約100棟が立ち退き――閉店を選んだ「老舗」や「チェーン店」

 今回の再開発で際立つのは「立ち退き物件の多さ」だ。再開発面積は1期部分が約2.6ヘクタール、2期部分が約2.1ヘクタールで、合わせると東京ドームの面積(約4.6ヘクタール)よりも少し広い。1期部分だけで立ち退き対象・解体となる物件は約60棟、2期部分を合わせると100棟ほどにも上るとみられる。  これまでも、渋谷駅周辺では東急グループにより多くの大型再開発がおこなわれてきた。しかし、それらの多くは旧線路敷地、駅舎、大型商業ビルなどの跡地を中心としたものであったため、立ち退きが行われたエリアは限定的であり、近年渋谷において「街ごと消える」ような再開発は少なかった。桜丘地区においてすでに再開発が完了したエリアである「東急セルリアンタワー」(2001年竣工、東急ホテルなど)についても、敷地の大部分は東急電鉄の旧本社屋ビルであった。
セルリアンタワー

東急百貨店から桜丘町(左)・セルリアンタワー(中央)を望む。
現在は「渋谷フクラス」の建設によりこの角度からは見ることができない。

 そのため、今回の再開発では惜しまれつつ「閉店」となった店舗も少なくない。  再開発から取り残されてきた桜丘だけに、なかには十数年、もしくは数十年に亘って地域に親しまれてきた「老舗」の姿も目立つ。例を挙げると、半世紀以上の歴史があるダンス教室「玉井ダンス教室」、50年近く続いた立呑み酒場「富士屋本店」(ワインバーのみ存続)、ジャズ喫茶「メアリージェーン」、お食事処「かいどう」などだ。こうした老舗では店主が高齢の店もあったため、後継者問題により閉店を決めた店舗も少なくなかったであろう。  これらの老舗は、いずれも音楽と庶民グルメの街であった桜丘を象徴するような店であり、地方から、なかには外国から東京を訪れた際に桜丘にあるお気に入りの飲食店にわざわざ立ち寄る人もいたという。昨年末に筆者が訪れた際にも、桜丘の街を、そして思い出の店の最期を熱心にカメラに収める人の姿を見かけた。
富士屋本店

人気の立ち飲み店「富士屋本店」。
閉店間近だったこの日は別れを惜しむ客で「貸切」となっていた。

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「移転」を選んだ店舗も
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