「陸の孤島」となった成田空港。取り残された当事者が見た現場の惨状

 台風15号は、9月9日の未明から明け方にかけて関東地方を襲いました。その日、私は旅行先のタイから成田空港に帰国。その時は、まさか深夜まで空港に閉じ込められることになるとは思いもしませんでした。

誰も空港から出られないのに、飛行機がどんどん到着

空港内のあらゆる場所が人混みで埋め通されていました。

 9月8日夜、私は大学の友人らとタイ旅行を満喫し、帰国しようとしていました。しかし、台風を理由に飛行機は5時間遅延して出発。台風の被害はネットを通じて把握していたため、仕方がないと諦め、成田空港に到着。しかし、本当に大変なのはここからでした。  午後3時頃に空港に着くと、あらゆる場所に夥しい行列ができていました。しかも、人が多すぎてどの行列がどの交通機関に並んでいるものなのかよく分かりません。この時点でバス、電車は止まっていましたが、台風は去っているし、夜には帰れるだろうと思い、私達は空港内に座り込んで休憩し始めました。  しかし、待てども待てども交通機関が復活する見込みはなく、むしろ空港内の混雑は悪化していきます。実は、この時成田空港では台風の影響で遅延していた便が次から次へと到着していたにもかかわらず、空港から都心などに向かうJRと京成電鉄の列車は倒木の影響で運転できない状況が続いていました。そのうえ、高速道路も通行止めになり、バス会社も運転を見合わせていました。要するに、空港から出られない人がどんどん増えているという状況だったのです。

バスの乗り場には全ての電光掲示板にバスが完全運休になっていると記した紙が貼ってありました。

 誰も外に出られないまま、飛行機だけが到着し続け、ついに私たちは自分たちが帰宅困難者になっていることに気づきました。

混乱する空港の中で、情報源はツイッター

 空港内はスタッフ不足が深刻で、館内アナウンスなども不十分だったため、情報が錯綜していました。また、トイレに行くのにも人混みをかき分けなければならない程の人口密度だったため、逐一交通機関の運行状況をチェックをするのは難しい状況でした。  そんな中、多くの人が情報源にしていたのはツイッターでした。ツイッターで「成田空港」と検索すると、同じように空港に閉じ込められた人たちが情報を発信したり、求めたりしており、閉じ込められた人たちが成田空港の様子を表現した「陸の孤島」という言葉は、ツイッターのトレンドにも入りました。  ツイッターでは「飛行機の国内便を乗り継いで羽田空港まで行くのが早い」「宇都宮行きのバスだけ発車しているからそれに乗ってから別の路線に乗るのが良い」など様々な情報が溢れかえっています。  交通機関を待ちかねた人たちが「徒歩で成田駅まで移動し電車に乗る」「付近のレンタカー屋を探して乗る」などの方法で空港を脱出していることも分かってきました。さらに「誰か相乗りでレンタカーを借りて脱出しませんか」とツイッター上で空港内の人たちに呼びかける人まで出現。  とはいえ、ネットで個人が発信している情報のためどこまで信憑性があるか判断することは難しく、情報が錯綜する中で空港内の人たちは混乱していました。
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