消費税を廃止したマレーシアはどうなったか? マレーシア人に聞いてみた

野党連合が掲げた「十の公約」

 そして野党連合は政権奪取のために十の公約を掲げた、という。 「まずは、高速道路の無料化な。」(ムハンマド)  昔、日本でも聞いたことのある公約である。 「それから、消費税の廃止」(アミルディン)マレーシアでの名称は「GST」(Goods and Service Tax)で、元々は6%だったという。 「あとは、反汚職もあった」(ムハンマド)  筆者が、「つい最近、日本の選挙でも消費税廃止と教育ローン徳政令を打ち出した政党があったぞ」と話すと、二人は腹を抱えて笑い出した。 「そういえば、教育ローン返済不要もマニフェストに入っていたな」(アミルディン)
アミルディン氏

アミルディン氏

 で、どうなったのか?

消費税は廃止されたが……

「確かに、消費税は0%になった。だけどな、ガソリンの値段が上がったんだ。元々はリッターあたり1.5リンギットだったのに、今は2リンギットを超えている。」(ムハンマド) (筆者註:8月20日現在、1リンギットは約25.5円である) 「政府は急に税収が減ったわけだろ。6%だったものが0になったものの、これではまずいと新しい税金、SSTの徴収を始めた。それが去年の十月からだったかな。結果的に、国民の税負担は前より増えてしまったよ」(アミルディン)  つまり、0%の時期は数か月しか続かなかったということだ。ちなみに、この0%の期間は「タックスホリデー」と呼ばれている。そしてそのタックスホリデーの期間は駆け込み需要もあったようだがその後、マレーシア経済はどうなったのか? 「逆に悪くなった*。それから下降は今も続いている。外国の投資家も、一斉に資金を引き揚げてしまった。経済も悪くなるのも当然だよな」(ムハンマド) <編集部注*第1四半期マレーシアGDP、前年比+4.5%に鈍化 景気下振れリスク|ロイター によれば、「悪化」というよりは「減速」であり、その要因は米中貿易戦争の煽りを受けたことや、債務問題でマハティール政権が緊縮的な政策を取ったことなどが挙げられる>  もう一つ今回のマレーシアで特筆すべきは、かつてマハティールが後継者として指名しながら、同性愛その他の容疑で解任し、有罪判決まで追い込んだアンワル・イブラヒムが老マハティールと和解し、連立政権に加わっていることだ。90を過ぎた老人が長期間政権に居座れるはずもなく、今回は短期間のうちにアンワルへの政権禅譲を約束している。さて、どうなることか。  なかなか、世の中バラ色の話というのはないようだ。 <取材・文/タカ大丸>
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
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