横浜カジノ誘致の根拠データに「作為」発覚。「横浜市の観光消費額は少ない」という欺き

横浜市調査は対面聞き取り、観光庁調査はアンケート郵送

 まず、調査方法が違う。 【横浜市調査】:横浜市内の観光施設10ヶ所(赤レンガ倉庫、山下公園、ズーラシア、八景島シーパラダイスなど)で来訪者にアンケート用紙を用いて対面聞き取り調査 【観光庁調査】:調査対象者へ調査票を配布し、調査対象者が調査票に記入して返送  横浜市調査は観光の途中、しかも道端で調査員に対して、調査票に基づいた質問項目に回答する。一方、観光庁調査は観光が全て終わった後に自宅で旅行内容を思い出しながら記入する。回答するタイミング(観光の途中、観光後)、回答方法(道端での聞き取り調査への回答、自宅でアンケート記入)を考えると、横浜市調査は実態よりも数字が低く出ている可能性がある。

横浜市調査は消費金額の計算範囲が狭い

 2つの調査における消費金額の定義を報告書から引用すると、以下のようになっている。 【横浜市調査】:宿泊費、市内交通費、飲食代、おみやげ代、お買い物代(おみやげ以外)、施設・イベント入場料、その他 *旅行会社の事前支払いは除く *横浜市内に滞在中に使う総額予算 【観光庁調査】:旅行中、または旅行のために消費した支出額の合計をいい、他者が支払ったもの及び土産代を含む  エビデンスとして、報告書の対象箇所を画像2、画像3に示す。なお、配信先によっては画像が出ない場合もあるので、その場合は、「平成29年度 集客実人員調査及び観光動態消費動向調査報告書」P23と、「旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究 2017年度版」をご覧になれば双方の定義や対象が異なることがおわかりになるはずだ。
画像2 横浜市調査 調査票

<画像2 横浜市調査 聞き取り調査で使用した調査票>
出典:「平成29年度 集客実人員調査及び観光動態消費動向調査報告書」P23

画像3 観光庁調査 用語解説

<画像3 観光庁調査 用語解説>
出典:「旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究 2017年度版」P12

 項目数だけを見ると横浜市調査の方が多く見えるが、横浜市調査の項目は全て観光庁調査の「旅行中の支出額の合計」に相当しており、実際は観光庁調査の方が計算範囲が広いことがわかるだろうか?2つの文言を冷静に見比べると、観光庁調査には横浜市調査で除外されている以下3点が計算対象に含まれているのだ。 ・旅行会社の事前支払い(=パックツアー、団体旅行の参加費など) ・他者が支払ったもの ・旅行のために消費した支出額(=旅行前の準備や旅行後にかかった費用など)  しかも、パックツアーや団体旅行の参加費には宿泊費、飛行機代、新幹線代などの高額な費用が計上されるため、合計金額に与える影響が大きい。この数字を横浜市でははっきりと「*旅行会社の事前支払いは除く」という注釈をつけて除外させているのだから、横浜市の数字が少なくなるのは当たり前だ。

横浜市調査には価格が高いハイシーズンが含まれていない

 2つの調査は調査時期も異なっている。 【横浜市調査】:5月下旬、7月中旬、9月下旬、12月中旬 【観光庁調査】:1年間の旅行実態を3 カ月ごとの4 回に分けて調査を実施  エビデンスとして、報告書の対象箇所を画像4、画像5に示す。
画像4 横浜市調査 聞き取り調査の概要

<画像4 横浜市調査 聞き取り調査の概要>
出典:「平成29年度 集客実人員調査及び観光動態消費動向調査報告書」P2

画像5 観光庁調査 用語解説

<画像5 観光庁調査 用語解説>
出典:「旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究 2017年度版」P11

 宿泊費、新幹線代や飛行機代はハイシーズンとオフシーズンでは2倍以上の差が出ることも珍しくない。だが、横浜市調査では、年末年始、ゴールデンウィーク、お盆などのハイシーズンが調査期間に含まれていない。一方、観光庁調査は通年を調査期間として、その中で四半期に分けて調査しているためハイシーズンも含まれている。つまり、ハイシーズンが調査期間に含まれていないために横浜市調査は数字が少なくなっている可能性が高い。  以上が横浜市によるデータに関する不適切としか思えない「作為」の概要だ。このトリックを理解した上で、冒頭で紹介した会見資料の2ページ目を改めて見直したい(画像1参照)。8月22日の記者会見で林市長はカジノ誘致の根拠の一つとして、この内容を説明している。
画像1 記者会見資料 横浜市の現状と課題

画像1 記者会見資料 横浜市の現状と課題
出典:2019年8月22日 横浜市長 定例記者会見資料「IRの実現に向けて」

 横浜市は観光消費額が少なく、インバウンド需要を取り込めていないと説明されているが、これは少なくとも提示されたデータではそのことを証明するには不適切であり、到底説得力に欠けるものだと言わざるを得ない。いや、敢えて言えば、はじめから結論を導くために「捏造」されたデータだと言っても過言ではないだろう。計算範囲が狭く、オフシーズンのみに調査したデータを横浜市は使用しているから、観光消費額が低く算出されているに過ぎないのだ。  さらに、萩原市議は追加で下記2点を指摘しているのだが、この2点についてはエビデンスとなる記載を報告書から見つけられなかったため、これ以上の言及は避ける。 ・観光庁調査では消費した金額が最も高い都道府県に全てまとめて計上している。そのため、消費金額が大きくなりやすい東京都の数字はさらに大きく膨れ上がっている可能性あり ・横浜市調査は観光中の対面調査のため日帰り、宿泊はどちらか1つしか選べない。一方、観光庁調査は過去3ヶ月以内に日帰りと宿泊の両方の観光をした場合は、それぞれの調査票に回答できる。横浜市調査は日帰り観光客が約9割と多く、観光庁調査で日帰り観光客が約5割と少ない理由はこれではないのか。つまり、観光庁調査では単に日帰りと宿泊の両方に回答する者が大半だったため、全体の半分である約5割に落ち着いただけではないか。 また、8月22日の記者会見資料には、他にも出典の記載がないデータが散見される。今回の記事で明るみになったデータ捏造は氷山の一角である可能性も否定できない。
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「作為」を指摘された林市長、黄信号・赤信号答弁で逃亡
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