ゴーンを「売った」傍らで同じ不正を働いていた西川CEO
また西川氏は、2017年4月に代表取締役社長兼CEOの座をゴーンから譲られているが、その時点でゴーン被告あるいはルノー本社から「最もゴーンやルノーを裏切らず、日産自動車から搾り取れるものはすべて搾り取れる日本人である」と評価されていたことになる。それこそが西川氏の存在価値だったことになるわけだ。
そんな西川氏が、今度は2018年11月19日にゴーン被告とケリー被告を東京地検特捜部に売り渡すことになる。その理由は、同年春頃から日産自動車とルノーの経営統合についてゴーン被告から聞かされていたものの、その新会社の最高幹部に自分の名前がなかったからではないかと考えている。
日産自動車をルノーに売り渡すことを「食い止めよう」などと考えたはずはなく、ひたすら自分のことだけを考えた行動なのではなかろうか。なぜならば、西川氏は、ゴーン被告を東京地検特捜部に売り渡した理由(ゴーンの不正報酬)と同じような不正を自分も同時期に行っていたことになるからだ。
しかもゴーン被告とケリー被告を東京地検絵特捜部に売り渡す時に、自分の不正は大目に見てもらえると思ったかもしれない。先にチクった方がいろいろ有利になることは事実である。ところが東京地検特捜部は(たぶんそれらしきことは言ったはずであるが)それをそのまま守るほど「お人よし」ではない。
ただ、今まではゴーン被告とケリー被告を「有罪」にするための証言を西川氏らから引き出すために、波風を立てないようにしていただけである。そしてそれが一段落したため、今度は西川氏も捜査対象に加えようとしているはずであり、それが先ほど書いた「何で今頃になって各社が(西川氏の不正を)急に取り上げるようになったか」の答えである。東京地検特捜部くらいになると世論も気にするもので、そのためにマスコミにリークして「(西川は)こんな悪い奴なんですよ」と世論を洗脳させるものだからである。
ゴーン被告という「重し」が取れた日産自動車は、2019年4~6月期の営業利益が前年同期比99%減のわずか16億円であった。ところが西川氏はそこでも自らの経営責任には全く触れず、ゴーン被告の「行き過ぎた経営」の弊害であると平然と述べ、生産体制の見直しと称して1万2500人もの首をあっさりと飛ばしてしまった。西川氏の経営能力はゼロである。
ここまで日産自動車の業績が悪化すると、それまでさんざんルノーの業績をかさ上げしてきたところから、今度はルノーにとってもお荷物となるため、西川体制のままなら今度は日産自動車そのものが「路頭に迷う」結果になりかねない。
ゴーン被告はもちろん「真っ黒」であるが、西川氏も負けずに「真っ黒」である。日産自動車のためにも事件の第2幕を早く上げたほうがよさそうである。そうでないと日産自動車そのものが「腐ってしまい手遅れになる」からである。
<文/闇株新聞>
‘10年創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者・経済記者などから注目を集めることに。2018年7月に休刊するが、今年7月に突如復刊(
「闇株新聞」)。有料メルマガ配信のほか、日々、新たな視点で記事を配信し続けている。現在、オリンパス事件や東芝の不正会計事件、日産ゴーン・ショックなどの経済事件の裏側を描いた新著を執筆中