市長が発表した税収820億円~1200億円の根拠
林市長の答弁内容に耐えかねた太田市議は、答弁中の林市長に直接質問を投げかけ、林市長も応じて答えるようになる。これ以降の3問の短いやり取りについては質問と回答が成立しているため、すべて
青信号としているが、その答弁内容には林市長の新たな本音が垣間見えている。
以下、そのやりとりを書き起こす。
太田市議(発言の要約):カジノ業者ではなく、市長の言葉で税収1200億円増加とハッキリ言ったじゃないか。
林市長(発言のまま):えーと、
私はですね、発表させて頂いたのは、要するに、事業者へのヒアリング等々を通して算出したということは申し上げてると思います。私がそうだということは申し上げてないですね。
✳︎答弁中、質問者の強い抗議があり、いったん答弁が中断
太田市議(発言の要約):税収増加の根拠を市長はハッキリ知らないまま喋っているんじゃないか。
林市長(発言のまま):いや、知らないことはないです。ちょっと、
そこは、ただいま誤解を受けた、私の説明不足だと思います。
太田市議(発言の要約):カジノ事業者の言った数字をそのまま喋っただけじゃないのか。
林市長(発言のまま):これは、あのー、
何と申したらいいんですか、事業者からの提案を受けた時の、その、
資料をもとに申し上げました。以上、ご答弁申し上げました。
まず、1問目。
「
増収効果の数字はカジノ事業者へのヒアリングを通じて算出したもので、私が言ったものではない」という主旨の答弁をしている。本記事の冒頭で紹介した通り、横浜市の増収効果は年間820億円〜1200億円であると
8月22日の記者会見で市長自ら説明しているにもかかわらず、だ。
2問目。
増収の根拠は「
知らないことはない(=知っている)」と明言している。だが、分析結果1〜2でも紹介した通り、その根拠は一貫して答えようとしない。
つまり、カジノによる増収効果820億円〜1200億円について、林市長の言葉を信じれば、その算出根拠を林市長は知っている。しかし、その
算出根拠を表に出さないまま、カジノの予算を確保しようとしている。
ちなみに、横浜市議会に提出されているIR推進事業の補正予算案は約4億円規模。現在、横浜市議会はカジノ誘致に賛成と見られる自民党、公明党が過半数を占めているため、この補正予算案は9月20日の本会議で可決される見通しになっている。
カジノの経済効果を誰も説明できないまま、予算だけは確保され、着々とカジノ誘致が進められている。
<文・図版作成/犬飼淳>
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@jun21101016
いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身の
noteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。
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