根拠を明かせぬ数字で巨額の税金をつぎ込むことを答弁する林文子市長(横浜市会インターネット中継より)
林市長はカジノを含むIR誘致を表明した2019年8月22日の記者会見で、IRによる横浜市の増収効果は年間820億円〜1200億円と自らの口で説明している。(参照:
横浜市記者発表資料「IRの実現に向けて」P.4)
しかし、この
増収効果の内訳や根拠について、林市長や横浜市は納得のいく説明をこれまでしていない。そうした中で9月3日に始まった横浜市会の本会議 議案質問。IR推進事業の補正予算案の審議を控える中、カジノによる増収効果の見込みの甘さについても質問が相次いだ。
本記事では、
立憲民主党・太田正孝市議*と
林市長の質疑において、増収効果に関する部分を抜粋して、信号無視話法分析していく。具体的には、信号機のように3色(
青はOK、
黄は注意、
赤はダメ)で直感的に視覚化する。
<*太田市議は
前回記事で紹介した通り、林市長に対してカジノ反対の立場で、計8回と最も多く質問してきた議員>
※「灰色」については本記事においては表記せず
林市長の回答を集計した結果、下記の円グラフのような結果となった。
<色別集計・結果>
●林市長:
赤信号74%、
青信号18%、 地の色9%
(※小数点以下を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはならない)
大半が赤信号でほとんど質問に答えていない。
いったいどのような質疑だったのか詳しく見ていきたい。(※以降の分析結果は、増収効果に関するやりとりの抜粋。質問者は発言を要約して記載。答弁者は発言のまま記載)
市長が発表した税収820億円~1200億円の根拠
太田市議(発言の要約):市長、あなたは多ければ1200億円というお金が横浜市に入ってくるとおっしゃった。その1200億円を算定した根拠では、何人の人がカジノに入って、どれぐらいの金をカジノでスって、1200億円が入ってくる計算? その試算では、カジノに溺れて、カジノ依存症になる人は何人いる?
太田市議の質問は、主に以下2点である。
・増収1200億円の算出根拠
・増収1200億円を達成した場合のカジノの利用客数、利用客の損失金額、ギャンブル依存症になる患者数の見込み
カジノによるメリット(横浜市の増収効果)とデメリット(利用客に予想される不幸)の両面を捉えていると言える。この質問に対する林市長の答弁。
林市長(発言のまま):税収効果の内訳でございましたけども、えー、
記者会見の時に、お、
お示しいたしましたIRの、おー、
経済効果、区域内の消費額、地方自治体の増収額というのはですね、昨年の調査にご協力頂いた事業者の皆様から、えー、
政令を踏まえて、再度ご提供を受けたものというのがベースでございます。これらの数値についてはですね、事業者へのヒアリング等を行って根拠に基づいて、えー、
算出されたものだということは確認してますけども、えー、
まだまだですね、あのー、
きちっと精査はされてないというふうに、あのー、
しております。
それからまた、事業者様はですね、あの、
「公表しないで」ということを前提に情報提供頂いていますので、これ以上のご案内はちょっとできないんですけども。今後、補正予算を活用いたしまして、詳細な調査を進めることで、経済効果等の数字の精査を前に進めて、根拠をお示しできるようにして参ります。(以上、ほぼ
赤信号)
まず、1段落目は下記のように
論点をすり替えており、
赤信号とした。
【質問】税収増の根拠
↓
【回答】税収増の提示過程
また、
「数字は精査されていない」という衝撃的な事実をさらっと白状している。
2段落目は正当な理由なく答弁を拒否しており、同じく
赤信号。
しかも、
増収効果の根拠を説明すらできないのに、補正予算(合計 約4億円)を使って、これから数字を精査すると述べている。
結局、太田市議の質問(
増収1200億円の算出根拠、増収1200億円を達成した場合のカジノの利用客数、利用客の損失、ギャンブル依存症になる患者数の見込み)には
一切答えてない。
当然、答弁漏れを指摘されて、林市長は再び答弁することになる。