ベトナム人技能実習生ら3人が福島県の建設会社を提訴
左から旗手明さん、飯田勝泰さん、佐々木史郎さん、中村優介さん
技能実習生として来日し働いていたベトナム人男性3人が、
技能実習契約に反して除染作業・被ばく労働に従事させられたとして、約1200万円の損害賠償を求めて福島県の郡山市の建設会社・
株式会社日和田を提訴した。3人を支援する全統一労働組合と、技能実習生除染・被ばく労働事件訴訟弁護団らが9月4日に記者会見で明らかにした。
3人は
鉄筋施行・型枠施行の技能を実習する雇用契約を日和田とのあいだに締結し、2015年7月に来日、同年8月から就労を開始した。しかし、実際は契約通りに鉄筋施行・型枠施行の仕事に従事することができず、2016年3月から2018年3月の間の300日以上の労働日を除染・被ばく労働に従事させられることになった。
全統一労働組合は日和田に対し、団体交渉や補償金支払いの提案といった手段で働きかけたが、
同社は謝罪と補償を拒否。解決の見通しが立たず提訴することとなった。雇用契約に反して除染作業に従事させられていた技能実習生が雇用主の企業を相手取った訴訟を起こすのは、今回が初となる。
そもそも技能実習制度とは、「
我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国への移転を図り、開発途上国の経済発展を狙う『人づくり』に協力することを目的とする」という基本理念のもとに制度化されたものだ。ベトナム人の技能実習生3人は鉄筋施行・型枠施行の技能を習得するために来日したのだ。
それにもかかわらず、日和田は3人との雇用契約に違反し、鉄筋施行・型枠施行には関係のない仕事に3人を従事させた。日和田が作成した3人の工事内容がまとめられた資料には、「鉄筋組立の補助」「型枠組立の補助」などの仕事内容が記載されているが、これも3人が体系的な技能を習得できるようなものでは到底なかったという。
原告の1人である
グェン・バ・コンさん(36)は直筆の手紙で次のように書いている。
「日本に来てから、専門の勉強はほとんどできませんでした。契約書によると、わたくしの専門の勉強は鉄筋施行ですが。日和田会社はいってから、てっきんしごとがあたってないです。いろいろちがうことをさせられました」(原文ママ)
外国人技能実習生権利ネットワークの旗手明さんは会見で次のように訴えた。「
技能実習制度のカラクリが一番ひどい形で暴露された。国際貢献のための制度であるはずの技能実習が、
日本の必要に応じて外国の労働者、労働力を都合よく使うためのものになってしまっている。93年にスタートした制度だが、昨年は33万人の実習生が日本で働いており、これは今後5年間で入れようとしている特定技能の人数に匹敵する。これだけ日本は技能実習生に頼らざるを得ない状況になっている。その労働者のサポートを生涯にわたって国境を越えてできるのかどうか、という問題が投げかけられている」