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女性向け風俗、それは女性客に向けた性的サービスを提供する店舗のことである。
出張ホスト、レズビアン風俗、性感マッサージと、その形態は様々であるが、特に昨年からその社会的注目度は増し、近年伸びつつある産業と言っても過言ではない。
とある女性芸人が自身の女性向け風俗体験談を赤裸々に語った事が話題になったり、昨年末にはルポライター、ハラ・ショー氏が
『女性専用:快感と癒しを「風俗」で買う女たち』(徳間書店)という本を出版したりと、その認知度は以前に比べると上がったのでないだろうか。
その歴史は古く、確かな歴史的資料は存在しないが、20年前には札幌に女性向け風俗が存在していたともいう。また、2007年には福岡に女性用ソープが存在したというが、その息は長く続かず、開店から8ヶ月で閉店することになってしまった。
無論、江戸時代には歌舞伎の世界ではまだ舞台に立つことのできない若手の少年役者が陰間(「陰の間」の役者という意味から)と呼ばれ、主に男性を客として売色をしていたが、時折女性を客に取ることもあった、という事を考えると大して驚くほどアブノーマルなものでもないのだろう。また、新宿二丁目で同性愛の男性を対象とする「売り専」と呼ばれる男娼の中には、女性を相手にする者もいた、という。
異性愛男性にとって性産業が一般的であったのは、家父長社会において社会的に許容されていたお陰である。それに比べ、日陰者(女性・同性愛者)を対象とした性産業は、社会的にはなかなか許容されてこなかったものの、以前から存在していたのである。それは性欲が食欲・睡眠欲と同等に人間の3大欲求であることを念頭に置くと、あって然るべきものである。
近年の女性向け性産業の動きとして顕著なのが、明らかにその店舗数を拡大している事だ。2007年にできた女性用ソープが難航した大きな理由は、男性側の力不足とそれに伴う人手不足だそう。つまり、女性向け風俗で働くにはそれなりのホスピタリティと技術力が必要という事になる。身体的な射精だけでサービスが終わる男性向けとは異なり、女性向け風俗は利用客に精神的な多幸感を与える必要がある、という事だ。
では近年の女性向け風俗では、どのようなサービスを受けられるのか。
大きく分けると「疑似恋愛型」として性感を伴わない出張ホスト型店舗もあるし、性感マッサージ店においても「デートコース」と呼ばれ、デートに重きをおくものがあるが、ここではいわゆる性感マッサージ店の流れを説明していきたい。
大きな流れとして、最初に女性客が予約をする所からそのプロセスは始まる。どのような店を選び、誰を選び、どのくらいの時間を要求するのか、という所だ。女性向け風俗では男性は「セラピスト」と呼ばれ、どの店舗のサイトに行っても大体のプロフィールが書かれている。ここで女性は自分の需要とマッチするような男性セラピストを選ぶ。また、女性向け風俗情報サイトには、それぞれの口コミや体験談が書かれているのでそれも参考にすることもあるだろう。
気になる男性セラピストの出勤情報と自身のスケジュールを照らし合わせ、予約する。もちろん当日での予約も男性セラピストの空き次第で可能だが、基本的には事前予約、ということになる。
というのも女性向け風俗においては、予約が人気セラピストに集中しがちで、フリー(指名なし)の受注数が圧倒的に少ない。多数のセラピストを待機させることが困難ゆえに基本的に自前予約制という形をとっている。つまり、女性向け風俗は気軽に友人何人かと飲み会の後に繰り出す、というような文化ではないのだ。
男性セラピスト達は、もちろん個人の裁量や店の方針によってさまざまであろうが、実際にセラピストとして活動するまでに緻密なトレーニングを受け、サービスと技術の面である程度のクオリティが担保されている。よって、ただただ女性の身体を触りたい、というような男性では勤まらないのである。
そのような男性セラピストと指定の時間・場所で待ち合わせをし、施術を行うホテルへ。一緒に行く場合もあるし、指定のホテルで待ち合わせという事もあるだろう。ホテルに入ったら、軽い会話の中で女性客が何を求めているのか、何を求めていないのかを男性セラピストと丁寧に擦り合わせをし、実際の施術に入る。
基本的にはマッサージから身体中の性感を刺激してもらい、満足を得る、という流れだ。ただし、男性セラピストとはいえ赤の他人。ここで大事なのは、女性客が触れて欲しいところ、触れて欲しくないところを明確にして、きちんと伝えることだ。
無論、逆も然りで、女性客も過度な要求やサービス外の事を頼むのはご法度だ。それぞれの店舗のウェブサイトで何を提供するのかは明確に書かれているので、そこは事前に確認しておくべきである。わざわざ中華料理店に行ってメニューにあるはずのないイタリア料理を頼む客はいないのと同じように。