青島健太候補(右)も、菅官房長官と同様に何も答えなかった
菅氏に応援演説をしてもらった側の青島氏も変わらなかった。元スポーツ選手でスポーツライターとしてテレビでコメントする機会が多かった青島氏は、スポーツ交流にも悪影響を及ぼしている日韓関係悪化については何も答えなかった。
聴衆との握手や写真撮影を終えた青島氏に声をかけ、駅改札口までのぶら下がり取材内容は以下の通りだ。
――(演説で)五輪のことに触れられていましたが、日韓関係悪化でボイコットの動きも出ていますが。改善した方がいいと思いますか。
青島氏:はい。すみません。申し訳ありません。
――改善するべきだと思いますか、日韓関係を。五輪ボイコットの話も出ていますが。
青島氏:ちょっといま県政の話ですので、それは。
――しかし、(応援演説で)菅さんも五輪のことに触れられました。知事になったら日韓関係悪化、(官邸に)申し入れるのですか。
青島氏:その質問には、いま答えられない。
――知事になった時の対応を聞いているのです。なった場合の話を先ほどしていたじゃないですか。
青島氏:(笑いつつ無言の会釈)
官邸側が総動員体制で臨むも、野党系候補の大野氏が当選
青島氏を破って初当選した、野党系候補の大野元裕氏(右から2人目)
スポーツ界での経験を活かす形で、目玉(主要)公約の一つにスポーツ政策を掲げ、知事就任をした場合には得意分野での言動が期待された青島氏。日韓スポーツ交流の中止や延期が相次ぐ原因となっている日韓関係悪化について、知事候補としてもスポーツライターとしても一言も語ろうとしなかった。
埼玉県知事選は当初、トリプルスコアからダブルスコアの差で青島氏の楽勝の状況だった。しかし、もう一人の野党系有力女性候補の出馬辞退で与野党一騎打ち状態の構図になったことや上田知事の応援などで大野氏が猛追。立憲民主党など4野党が支持した無所属新人の元防衛政務官・大野元裕氏が初当選した。
菅氏の2回目の応援演説や三浦氏の連日の現地入りは、官邸の総動員体制を物語るものだ。「菅官房長官と懇意な佐藤浩・創価学会副会長も官邸から依頼を受けて急遽、創価学会がフル稼働状態となっていたようです」(永田町ウォッチャー)。
総動員体制で臨んだ結果の惨敗は、国益毀損の日韓関係悪化に異論を唱えない“官邸傀儡候補”の青島氏にノーをつきつけた形になった。国政選挙以外といえども、日韓関係の悪化の影響は日本全体に及んでいる。今後の地方選挙でも、一つの選択基準となっていく可能性があるだろう。
<取材・文・撮影/横田一>