埼玉県知事選で「訪日外国人観光客増」を訴えた菅官房長官
埼玉県知事選で、自公推薦青島健太候補への応援演説をする菅官房長官(左)。アベノミクスの成果として「訪日外国人観光客の増加」をアピール
安倍首相は対韓強硬外交を見直す兆しはまったくないが、政権ナンバー2の菅義偉官房長官も「日韓関係悪化の影響は皆無に等しい」と言わんばかりの言動を繰り返している。
「埼玉県知事選(8月25日投開票:立憲民主党など4野党が支持した無所属新人の元防衛政務官・大野元裕氏が初当選)」のラストサンデーの18日、菅氏は朝霞市と川越市を訪れて、元スポーツライターの青島健太候補(自公推薦)への応援演説で次のように訴えた。
「(第二次安倍政権が誕生した2012年12月に)政権交代をする前は(訪日外国人観光客は)836万人で、昨年は3119万人に増えた。それだけ日本に来てくれれば、お金も使ってくれます。消費額は昨年4兆5000億円でした。
来年は2020年、東京オリンピック・パラリンピックがあります。(訪日外国人観光客の)目標を4000万人にしています。完全に射程の中に入っている。2030年には6000万人を目標にしています。こうしたことができるようにしっかりと行っていきます」
「韓国人観光客激減の影響は!?」。菅官房長官を直撃
訪日外国人観光客増加をアベミクスの成果とアピールするのは菅氏の応援演説の
“定番ネタ”で、過去の国政選挙や大型地方選挙でも何度も耳にしてきた。しかし日韓関係悪化で、外国人観光客の約4分の1を占める韓国人観光客が激減をしていても、まだ同じ話をしていた。
対米戦争で大損害を被っているのに「日本軍の連戦連勝」との情報を流し続けた大本営と同様だ。現在の官邸も、対韓貿易戦争で訪日韓国人が激減しているのに、悪影響は皆無と見なして「2020年4000万人達成」の目標を下方修正していなかったのだ。
華々しく成果を語る一方、不都合な真実を無視する姿勢は戦後もまったく同じ。そこで、“現代版大本営”のような官邸を仕切る菅氏を直撃した。北朝霞駅前での応援演説後、聴衆とのハイタッチを終えて車に乗り込んだところに近づいて聞いてみた。
――菅さん、日韓関係悪化でインバウンドが減ってしまうのではないですか。日韓関係悪化で。
窓越しに声をかけたが、菅官房長官は何も答えないまま、にやにやしながら開いていた窓をすぐに閉めた。
政権運営を左右する重要選挙には必ずと言っていいほど関わる、辣腕選挙プランナーの三浦博史氏(「アスク社長」・手を上げている人物)も連日、埼玉県知事選の街宣会場に駆けつけた。菅官房長官と懇意の選挙プランナーとして有名で、この選挙にいかに力を入れていたかがわかる
2か所目の応援演説場所である本川越駅前でも菅氏は、訪日観光客増加の成果を訴えていた。東京五輪についても触れたので、街宣後、車に乗り込んだところを再直撃。
――菅さん、(韓国で東京)五輪ボイコットの話も出ていますが。日韓関係、改善しないのですか。
しかし、手を振って払いのけようとする仕草をするだけで一言も発することなかった。
青島候補への応援演説の中で触れた「訪日外国人観光客(インバウンド)」や「東京オリンピック」に対する悪影響が、日韓関係悪化で出始めている。菅氏は私の質問にまったく答えようとせず、他媒体記者との囲み取材にも応じることなくクルマで走り去った。説明責任放棄としか言いようがない。