「トップダウン」なだけのリーダーはチームを育てられない
         筆者はトップダウンではない、ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップ実践手法を演習している。そこで、よく受ける質問に、「ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップとは、部下や後輩の言いなりになることか」「リーダーたるもの明確な指針を示して徹底すべきではないか」というものがある。
 それに対して私は、ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップとは、「部下や後輩の言いなりになることではない」「明確な指針を示して徹底する前に繰り出す手法だ」と答えている。
 演習を行なっていると、その勘所がわかっていないので、トップダウンで指示・命令するか、ボトムアップで部下や後輩の言いなりになるかの両極端に陥ってしまうケースが実に多い。
 トップダウンのリーダーシップを3つのステップにモデル化すると、「上司が部下や後輩に対して問題点を指摘し、改善方法を指示して実行させる」となる。これに対して、ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップは、「部下や後輩が自ら、問題点を発見し、改善策を立案し、実行する」というステップだ。
 部下や後輩が、受動的な立場をとるのがトップダウンで、能動的な立場をとるのがボトムアップの巻き込み型のリーダーシップで、この点が抜本的に異なる。
 なにもトップダウンをすべてやめて、ボトムアップに切り替えればよいと言っているわけではない。トップダウンでやらせきらなければならないことは、トップダウンでやらせきればよい。法律を守る、コンプライアンスを遵守する、システムのエラーをなくす……。これらは否が応でも実施させなければならない。
 しかし、トップダウンで指示・命令しなくてもよいことまで、トップダウンでやらせていないだろうか? 枝葉末節までトップダウンにこだわっていないか? むしろ、トップダウンではないほうが効果をもたらすだろうことまでトップダウンに固執していないか……? こんなケースが山ほどある。
 つまり、状況に合わせて、トップダウンとボトムアップを使いわければよいことになる。しかし、役員から新入社員まで、各層に対してリーダーシップ実践演習をしていると、トップダウンのリーダーシップの使い手は山ほどいるが、ボトムアップのリーダーシップを繰り出せる人は極めて少ないことがわかる。
 そこで私は、「演習後一か月間、実践の場面でボトムアップのリーダーシップだけを繰り出してみてください」と申し上げる。そのくらいの心がけをしてもらって初めて、トップダウンのリーダーシップとボトムアップのリーダーシップがほどよく、ケースバイケースで繰り出せるようになるのが実態だ。
    
    
ボトムアップは部下の言いなりではない

photo via Pexels
ボトムアップの使い手は極めて少ない
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